自宅差し押さえで退去…人ごととは思えず

やがて、風のうわさで川越さんが住宅ローン破産をしていたことを知りました。もともと田舎のご両親の介護施設の費用が大変だという話は聞いていましたが、ご主人が体調を崩して仕事を辞めざるを得なくなり、収入が途絶えたようです。その結果、住宅ローンの返済に行き詰まり、やがて自宅は差し押さえられ、退去に至ったとのことでした。川越さんの部屋は、競売にかけられたと聞きました。

川越さんに降りかかった災難を、私はとても人ごととは思えませんでした。川越さんとは20数年前のほぼ同時期に、同じ新築マンションの同じ広さの部屋を購入しています。わが家は一度借り換えをしましたが、ローン残高は大して変わらないはずです。35年ローンの返済はゆうに10年以上残っていて、定年後も返し続けていく必要があります。

少し前まで下の娘が心理学の大学院に通っていたこともあり、わが家の家計は常に自転車操業状態でした。貯蓄があるといっても、せいぜい500万円くらいです。定年時には退職金が1500万円ほど出るので、退職金は全額住宅ローンの返済に充てた方がいいかもしれない。しかし、それだと老後資金が足りなくなります。確か、「公的年金だけでは老後資金が2000万円不足する」と大騒ぎしていたではありませんか。

お気楽な妻は、退職金で豪華客船の旅をもくろんでいたようです。私が「それどころじゃないだろう。退職金から住宅ローンの返済をしておかないと、うちだって、いつ川越さんみたいになるか分からないぞ」と言うと、露骨に嫌な顔をされました。