コロナ禍で、投資信託の世界でもオンライン開催型のセミナーがすっかり定番となった。講師としては、参加者の熱量を肌で感じながらお話しできる会場型のセミナーが好きなことに変わりはないのだが、世界中から参加者を募れたり、利用する会議システムによってはクイズやチャット機能もあったりと、オンラインならではの利点も多い。
筆者は、このセミナーのオンライン移行による最大の功績は、「質疑応答」の心理的なハードルを下げたことではないかと思っている。セミナーの規模や内容によってばらつきはあるものの、会場型と比べて匿名性が担保されるし、気軽に質問がしやすい。
もちろん、運営側としてはこの匿名性や気軽さが悪いほうに作用しないよう注意を払う必要もあるのだが、参加者から寄せられる多様な質問によって、むしろセミナーが盛り上がることのほうが多く、何より講師としてもさまざまな気付きが得られる。だから、と言うわけではないが、オンラインセミナーに参加される方はどんな些細なことでもいいので、ぜひ質問をしてほしい。
急増した「全米株式」に何を追加すべきかという質問
さて、最近そのオンラインセミナーで、必ずと言っていいほど筆者が遭遇する質問がある。具体的には米国株インデックスファンドの追加投資先に関する内容で、典型例は以下の2つだ。
①「全米株式」(または「S&P500」)に追加して「全世界株式」でも積立を始めたが、この組み合わせはアリか?
②「全米株式」(または「S&P500」)を保有していて、アップル株かテスラ株で個別株に挑戦したいが、この組み合わせはアリか?
両者に共通しているのは、米国株インデックスで一定の成果が出ているということと、投資に回せる余裕資金がまだあるということだろう。このように、株価が調整している今のタイミングで追加投資を検討したいという声は多い。
回答にあたり、質問者に確認しないといけないのは、追加投資を検討している意図だ。①のケースは、分散投資の一環として、幅広いマーケットを網羅した「全世界株式」を追加してはどうかと思ったのだろう。他方、②のケースは、すでに保有している米国株資産にさらにドライブをかける目的で個別株投資に挑戦したいという意図もうかがえる。
実際のセミナーでは、このように少しずつ質問の意図を探っていく。すると質問者は、最初に質問したときと同じ要領でチャットに回答してくれる。対話を重ねていくと、質問の背景や意図がより明確になるので、講師が回答を用意しやすいだけでなく、質疑応答のコーナー自体が他の参加者にとっても有益な時間となる。