身じまいの悩み

千里さん(仮名、70歳男性)は3つの店舗を経営する飲食店のオーナー。東北地方で生まれ育ち、高校卒業と同時に上京しました。千里さんにはもう20年共に生活している同性のパートナー(60歳)がいます。パートナーがフリーランスのライターで、それなりに仕事はあるものの千里さんほどの経済的基盤がないことが心配です。最近は専ら、事業を誰に引き継ごうか、どのようにしたらパートナーに財産を分与できるのか、と思案しています。

●パートナーと“ついのすみか”で最期まで…千里さんが下した重大決断

家を買うことを決めた千里さんは、自分の死後に財産をきちんとパートナーに遺す方法を調べ始めました。できれば、事業が好調なときも苦しいときもそばにいてくれた彼に全てを遺したいけれど、姉と弟にも渡さなければならないのだろうか、相続税を払えるようにしておかないといけないのでは――など、考えてみると知らないことばかりです。もし急に自分の体調が変化したときには、店じまいをきちんとしないと従業員に迷惑をかけてしまうのも心配です。パートナーにそんな話題を持ちかけると、縁起でもないと言われてしまいます。

まずは、自分とパートナーの関係を法律上はっきり形にしておきたいのですが、パートナーシップ制度だけでは不十分だそうです。周りでは養子縁組をするカップルもちらほらいるようですが、パートナーは両親や兄と妹、甥(おい)、姪(めい)ととても仲が良く、その縁を断つことは千里さんも望んでいません。元気なうちに何とかしなければという焦りが募っています。