成年後見制度
亡くなることを考える前に、まず、千里さんがもし認知症などのために十分な判断力が持てなくなったときに、不動産や預貯金を管理したり、必要なサービスを受けて生活ができるように契約をしたり、また不利な契約などをしてしまわないようにしなければなりません。
その際に利用できるのが「成年後見制度」です。成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分な人を対象として、成年後見人が支援や保護を行う制度です。
成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」があり、法定後見制度は本人の判断能力が不十分になった後に家庭裁判所に対して申し立てを行い、成年後見人を選任します。判断能力が不十分であれば「補助」、著しく不十分であれば「保佐」、判断能力が全くなければ「後見」という3つの類型があります。
ただし、制度を利用する前には誰かが居住地を管轄する家庭裁判所に手続きの開始を申し立てなければなりません。今のところ、同性パートナーが法定後見制度の開始の申し立てをすることはできず、千里さんの場合は四親等内の親族が行うか、住んでいる自治体の長が行うことになります。
また、同性パートナーが後見人として裁判所に認められることも難しいため、千里さんが望むような、パートナーが家や財産の管理をすることは実現できない可能性が高くなります。後見人はあくまで千里さんの権利を擁護することがミッションになるので、場合によってはパートナーに対してこれまでのように経済的な支援ができなくなるかもしれません。
任意後見制度は判断能力があるうちに自ら任意後見人を選び、何を委任するかを定めておくことができるものです。この場合は、千里さんが任意後見人としてパートナーを選んで任意後見契約を結んでおけば、千里さんの判断力が弱ってしまったときにパートナーが任意後見監督人(任意後見人が適正に後見を行っているか監督する人)選任の申し立てを家庭裁判所に行って、制度の利用を開始できます。