一時金受け取りの注意点と年金で受け取る場合のポイント
このようにまとめて受け取ることは、一時金で受け取るならばそれなりの効用がある一方で、デメリットや注意点もあります。人によっては気にならないかもしれない細かい点も含め、挙げておきます。
① まとめるための手続きの手間が発生する。
② 資産をまとめる際には、運用商品のまま移すのではなく一旦現金化して移すため、売買のタイミングによるマーケットリスクがある。
③ 資産を移す手続きには2か月程度かかり、その間、手続き中の資産については運用ができない
④ iDeCoの契約先がネット証券などの場合、(企業型DCでも稀に)資産を出す側の手続き料として4000円程度を徴収されてしまうケースがある。
⑤ 企業型DC以外に、確定給付企業年金に加入しており、その受け取りが65歳以降まで先延ばしすることが可能な場合、iDeCoとまとめることなく企業型DCを60歳で一時金受け取りした方が確定給付企業年金を含めたトータルの課税額が少なくなる可能性が高い。
ちなみに年金で受け取る場合ですが、企業型DCとiDeCoをまとめて受け取ることによるメリットは、振り込みの都度徴収される1回400円程度の給付手数料や、残高がある間徴収される年間1000円程度の口座管理料の負担が半分に減るという程度です。経済的な負担軽減という点では、まとめるよりも、年金として受け取る年数を短くしたり、年間の受け取り回数を減らしたりした方がメリットが大きいと思われます。
いずれにせよ、受け取りの選択肢が拡がりました。受け取りパターンを決める際には、一般論ではなく自分のケースでメリット、デメリットを比較してください。そうすることで後悔のない選択がきっとできます。
今回は、企業型DC加入者の60歳以降iDeCo加入のメリットについてご説明してきました。企業型DCに加入している方は、自分の意志で加入したというよりも会社が退職金制度として導入したので加入しているという意識の方が多く、会社があなたの老後資金のために掛け金を出してくれていること、口座を管理する費用等を負担してくれていること、さらに資産運用の基礎知識について学ぶ機会が与えられていることなどについて当たり前だと思っているかもしれません。
しかし、それは大間違いで、そのようなサポートは給与所得者のうち5人に1人しか受けられないもので、恵まれているといえます。そして、60歳以降にiDeCoに加入するとさらにメリットがあるのです。
企業型DCに加入している方は、掛金も口座料も会社負担と恵まれているだけにiDeCoの掛金や口座管理料を負担することは「損」というイメージを持つ方が少なくないのですが、メリットも正しく知っていただいて、自分の目の前に広がっているチャンスを上手に活用いただけたらと思います。