5月からiDeCoの60歳以上の加入要件が大幅に緩和されました。60代前半は働くのが当たり前という世の中の流れにキャッチアップする形で、60代になっても会社員や公務員として働き続けている方がiDeCoに加入できるようになりました。

60代前半のiDeCo加入はメリットばかりで、利用できるならば是非活用を、とこれまでもおススメしてきましたが、特に会社の制度として企業型DCに加入している方(以下「企業型DC加入者」という)はメリットが多く、さらに大きいのです。今回は企業型DC加入者の方に絞ってメリットとその活かし方をお伝えしていきます。

メリットその1:税制優遇メリットを受けながら老後資産づくりができる

iDeCoとしては基本のメリットです。具体的なメリット額を挙げながら説明した方がわかりやすいと思うので、企業型DCの加入は60歳までという方が60歳からiDeCoに加入するケースで話を進めていきます。

iDeCoは自分で掛け金を出して自分の老後資金を準備する制度です。この掛金は積立時に全額所得控除になるという税制優遇があるので、積み立てている間、所得税や住民税が軽減されます。60歳以上になって企業型DCを含む企業年金制度に一切入っていないとすればiDeCoの掛け金は月額2万3000円まで積み立て可能です。ですから、例えば、課税所得が195万円以上~330万円未満の方が限度額いっぱいの2万3000円を積み立てする場合、所得税と住民税あわせて年間5万5200円の税負担軽減メリットがあります(この計算では令和19年まで加算される復興特別所得税2.1%は加味していません)。これは1年間なので、60歳から即iDeCoに加入し5年間、目いっぱい積み立てすれば所得控除のメリット額は27万6000円にもなります。これは、明らかに大きなメリットです。

メリットその2:60歳以降、いつでも引き出しできる

iDeCoは老後資金を貯めるための制度なので、60歳以降にしか受け取れない、という制約があり、よくデメリットとして取り上げられます。私も若い方たちには、「掛金の所得控除メリットに目がくらんで目いっぱいiDeCoに掛金をつぎ込んでしまうと、60歳前にちょっとまとまったお金が必要なことがあったとしても引き出して使うことはできません。残念なことにならないように、くれぐれも掛け金は無理しないように」と口を酸っぱくして伝えています。ただ、60歳以上でのiDeCo加入、さらには企業型DCに長年加入していた方が60歳以降にiDeCo加入する場合にはこの制約が全くありません。

それは、受け取り開始年齢を判断する60歳時点での確定拠出年金の加入年数は、企業型DCの加入年数とiDeCoの加入年数、さらには、それらの運用指図の期間も合算してカウントされるためです。これらの合計が10年以上であれば60歳以降いつでも受け取り開始可能なのです。つまり、企業型DCに10年以上加入していた方は60歳以降いつでも受け取りたいと思ったときにiDeCoの受け取りをすることができます。ですから、企業型DCの加入期間が10年ある方であれば、一つ目のメリットを最大限生かすためにも、上限に近い掛金額で積み立てすることを検討したらいいのではないかと私は思います。