ときには“非情”に見えることも。後見人がお金を使わせてくれる条件は厳しい

親のお金ですが、家族の自由にはなりません。親を入院させたり通院させたりした際の支払いについては、家族が立て替えて、その都度、後見人に請求して実費をもらうようになります。

実際に私の相談者が、体験した話です。認知症の父親が緊急入院して命を取り留め、リハビリの成果で、脳への後遺症(言語不明瞭)は残ったものの、寝たきりから車いすでの生活が可能になったため、気分転換に親に小旅行をさせようと計画しましたが、その支出は後見人が本人にとって必要と認めなかったため、親のお金を使わせてはもらえませんでした。新しい洋服の購入や美容院代でさえも、特別な理由(後見人が考える「本人にとって必要なこと」)でなければ、お金を使わせてはもらえないのです。「やりたければ、子どもたちのお金で」ということになります。

ある相談者は、後見人に「その費用は本人が望んでいたことに使うのでしょうか? それともご家族がそれを望んでいるのでしょうか? 本人が望んでいたということが明確でなく、家族が望むことであれば、ご家族がご負担されたらよろしいのではないですか?」と言われたといって、悔しくて涙が出たと言っていました。

親が苦労して築き上げてきた資産なのに、家族が本人のためになると考える支出であっても、本人の意思がはっきり分からなければ、必要な支出とは認められないことが多いのです。

後見人は、家庭裁判所の指導のもと、ルールに従って、被後見人の財産を守っているだけなのですが、家族にとってみると、何とも「非情な人」に見えてしまうのです。

親が元気なうちに、親とお金の話ができていれば、こんなことにはなかっただろうにと、このようなご相談があるたびに思います。

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ここまで親との「お金の話」を先送りすることがもたらす問題点を解説しました。ただ、親と話をする必要性は分かったものの、一体どう切り出せばいい……!? という方も多いでしょう。

後編では、どのようなアプローチで親とお金の話をすればいいかアドバイスをお送りします。

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