介護保険制度がスタートしたのは2000年。介護保険は、時代に合わせ、3年ごとに改正を続けています。しかし、知らなければ受けられないサポートもあります。
介護事業を運営する株式会社アテンド代表の河北美紀氏は、最後まで自分らしい生き方を追及するために、介護保険などの公的保障制度を正しく活用する大切さを説いています。
そこで豊富な相談例から「介護破産」の怖さ、そして対処方法を河北氏に紹介してもらいます。(全3回の1回目)
※本稿は、河北美紀著『介護のプロだけが知っている! 介護でもらえる「お金」と「保障」がすらすらわかるノート』(実務教育出版)の一部を抜粋・再編集したものです。
裕福なセレブ? 82歳女性のMさん
千葉県在住のMさん(82歳女性)は要介護2。ご主人を3年前に亡くしてからは、自宅で引きこもり気味の生活を送っていました。そのせいで足腰が弱り、ついに一人で買い物へ行くことができなくなりました。
そんなMさんのところには週3回ほどヘルパーが買い物の支援に入っていますが、Mさんが書いたメモを見ながら食品を買ってきても、なかなかお気に召してくれません。「このちくわって美味しくないんだよね。総菜も美味しくない。高くてもいいから、もっと美味しいのを買ってきてちょうだい」などと言っては、「これ、捨てちゃうけど持ってく?」とヘルパーが買ってきた食品を渡そうとすることもありました。
そのためケアマネジャーもヘルパーも、「Mさんは裕福なセレブに違いない」という認識でいたのです。
Mさんに家賃の督促状が届いた
ところがある日、Mさんの自宅に「家賃が引き落しできなかった」と、家賃1カ月分の請求書(振込用紙)が届いたのです。ヘルパーは封筒を見て、「家賃が引き落しできなかったというお知らせみたいです」とMさんに伝えました。当のMさんは「そんなはずないわよ」と言っていましたが、ヘルパーから促されて通帳の残高を見てみると、「あ、ホントだ」と一言。