親とのコミュニケーションで“やってはいけないこと”

親が元気なうちに、親とお金の話をしたいと思っても、どのように切り出したらよいのか、悩んでいる人は多いです。

普段親とろくに話もしないような状態で、

「お父さんお母さんが介護になったときのお金はいくらくらいあるの?」

「万一に備えて、キャッシュカードの暗証番号を教えてよ」

などと切り出したら、親を不機嫌にさせてしまいます。なぜ、そのようなことを切り出したのかについて説明をしたくても、その後は耳も傾けてはくれません。コミュケーションは、そこで断絶してしまいます。

親と同居、あるいは近隣に住んでいて、日常的によく会っているか、週に一度は電話連絡している関係でなければ、親とお金の話をするには、3年はかかると思ってください。

多くの親は、終末期の医療や介護などで、子ども世代に金銭的な迷惑をかけたくないと思っています。子ども世代も同様に、親の医療や介護の費用は親のお金で賄いたいと思っています。利害は一致しているのです。

でも、親は子どもにお金の話をしません。それは理由があるからです。親心は複雑で、資産状況を知られたくないのです(ご相談に来られた70代後半の親御さんたちの傾向ですが)。

資産を伝えたら「それしかないの?」と言われるのではないか。あるいは、「そんなにあるなら、塾代や進学費用を出して」と頼られるかもしれない。または、旅行や家電の替え替え、リフォームなどでお金を使うと「そんなに使ったの?」と使い方を監視されるのではないか……そんな不安が頭をよぎるのです。

親とお金の話ができるようになるには、「この子たちに自分たちの資産を明らかにしても大丈夫だ」と思ってもらえるまでの関係を築かないとならないわけです。ポイントは、子ども世代は、親の体のことを心配しているのだということが伝わるコミュケーションを心掛けるべきです。

でも、これが一番難しい。

親子という甘えがあるので、ついストレートにものを言いすぎてしまいます。親とのコミュケーションで一番大事なのは、「親の行動を否定するようなことは言わない」ことです。それは、親のお金の使い方について言うことも含んでいます。

「家にばっかりいないで、散歩でもして体を動かさなきゃダメじゃない。早くボケるよ」

「サプリメントをこんなに買って、どうするの?」

子どもたちは親のことを心配して言うのですが、このような物言いをされると、親のほうは「余計なお世話だ」と、反発してしまうのです。

体を適度に動かしてほしいと思うなら

「寒い時期だけど、もう梅が咲いているのよ、一緒に見に行かない」とか、

「近所にリハビリセンターができたの知っている? 理学療法士さんが体のこわばりとか診てくれて、動きやすい体にしてくれたりするんですって。一度見学に行ってみない? お父さんにはまだまだ元気でいてほしいのよ。いくつになっても体のメンテナンスは、大事でしょ」と言ってみましょう。

高齢者は、お得だと思って、サプリメントの定期購入する人が多いです。当然、飲み残しが出てしまうのですが、そのようなことを目にしたときには、

「このサプリって、何に効くの?骨に良いのね。余っているなら、少し分けてくれる?そろそろ私も骨密度気にする年頃だから、飲んでみようかな」とか

「サプリを飲んでいるということは、母さんはどこか気になるところがあるんじゃないの? 時々でも膝が痛むんだったらお医者さんに診てもらうほうがいいよな。来週の平日、代休取れるから、俺も一緒に行くよ。心配だから、一緒に医者の話も聞いておきたいからね。何でもないなら、それで安心できるわけだから、無駄にはならないよ」とか……

ちょっと言い方を変えてみるだけで、ああ、この子は本当に自分たちのことを心配してくれているんだなぁということが、少しずつ伝わっていきます。

親の行動やお金の使い方を受け入れて認めていくことは信頼関係を深めていくうえで、とても大事になってきます。親にも承認欲求はあるのです。