③ 具体的な投資事例のピックアップ

これまでの5年間で象徴的な投資判断を選び出します。

(銘柄A)運用開始時から現在に至るまで、投資比率上位に継続して位置するのみならず、投資比率はさらに引き上げられており、パフォーマンス上の貢献も極めて大きい。

(銘柄B)銘柄Aと同様に上位銘柄に位置していたが、最近になって全株売却。パフォーマンス上プラス貢献しているものの、その後の銘柄Bの株価急上昇を逃している。

(銘柄C)運用開始時から上位銘柄であったが、その後様々な問題が表面化し、株価は大きく下落。しかし、早期に全株売却することにより、大きなマイナスは避けることができた。

(銘柄D)運用開始2年後に初めて組み入れ。一般的にはバリュー銘柄には分類されていない。

(銘柄E)運用開始後3年目に初めて組み入れられた小売り数銘柄のうちの1銘柄。その後パフォーマンスに大きく貢献。

④ 選び出した投資判断に関する疑問点のリストアップ
5銘柄については以下の点を運用者/チームに質問したいと考えます。

(銘柄A)運用開始時に上位に組み入れただけではなく、途中で投資比率を引き上げることができた理由は?  また、その後の株価上昇にも関わらず、継続保有できた理由は?

(銘柄B)運用開始時に上位銘柄とした理由は? 全株売却が早すぎた理由は?

(銘柄C)株価が大きく下落する前に全株売却できた理由は?

(銘柄D)バリュー銘柄とは思えないにも関わらず組み入れた理由は?

(銘柄E)3年目に銘柄Eも含む小売の新銘柄を発掘できた理由は?

⑤ 質問リストの運用者への提示
上記疑問点を、以下のような文書(注2)にして、インタビュー前のできるだけ早い時期に運用者/チームにお送りすることで、説明に必要な情報を前もって準備しておいていただきます。

(注2)実際のインタビューにあたっては他にも多くの質問がリストアップされますが、本稿では単純化のため、銘柄AからEに関する質問に限定してお示しします。

あいうえおファンド運用責任者様

以下5銘柄に関する投資判断について、できる限りその時点での調査分析記録等を交えて、その背景や理由をご説明ください。

(銘柄A)運用開始時から一貫して上位銘柄に位置し、大きなプラス貢献をしていると思われます。運用開始時に主力銘柄としたのはなぜですか? その後投資比率を引き上げることができたのはどのような投資判断によりますか? さらにどのような調査分析を行うことで、現在に至るまで継続して保有することができたのでしょうか?

(銘柄B)運用開始時にはどのような調査分析の上で強気の投資判断をされましたか? また、最近の売却のタイミングが随分早くなってしまったのは何故ですか? 仮に投資判断をやり直すとしても同じ結論でしょうか?

(銘柄C)全株売却にあたってはどのような調査分析に基づいて判断されましたか? 株価がさらに大きく下落する前に売却できたのはなぜだと思われますか?

(銘柄D)一般的にはバリュー銘柄と考えられていないにも関わらず組み入れを行ったのはなぜですか? どのような調査分析に基づいて株価が極めて割安な水準であると判断されましたか?

(銘柄E)以前は決してプラスに貢献していなかった小売業種で、新たなプラス貢献銘柄が数銘柄発掘できたのはなぜだと思われますか?

上記のように事前の準備を行い、論点を絞ると同時に、必要な情報を運用会社で事前に揃えておいていただくことにより、運用者のインタビュー調査の効果は大きく高まると考えています。

今回は、アクティブファンドの運用力評価を行うために極めて重要な運用者/チームのインタビューに向けての、対象ファンドの調査分析に関してご説明してきました。

次回は運用者/チームのインタビュー調査の目的をご説明します。定性評価に注力する評価機関では、インタビュー調査は可能な限り運用者/チームが働く運用拠点を訪問して行うことをポリシーとしています。彼らの現地調査へのこだわりとその理由についても併せてお話しします。