前回より連載が始まりました“優れた”インデックスファンドの選び方。前回は、その第1回として、“優れた”インデックスファンドの条件を確認し、インデックスファンド選びの難しさをお話しした上で、その選定プロセス3段階をご紹介しました。
今回の連載2回目では、選定プロセスの最初の段階であり、かつ最も重要なベンチマークの選び方についてお話しします。
運用成果の大部分はベンチマークで決定
消去法ではなく積極的な理由で選ぶには
最近ではインデックスファンドが人気を集めているようです。当サイトFinaseeに掲載されている販売会社ごとの売れ筋ファンドの上位には、必ずインデックスファンドが入っています。中でも日経平均株価指数(以下「日経225」)への連動を目指すものが目立ちます。投資家の皆様は、どのような理由で日経225に連動するインデックスファンドを選ばれたのでしょうか? どうして日本株を投資対象に選ばれたのでしょうか? なぜベンチマークは東証株価指数(以下「TOPIX」)ではなく日経225なのでしょうか? 積極的な理由はあるでしょうか? それとも消去法で選ばれたのでしょうか?
インデックスファンドは、ベンチマークである市場指数との連動を目指し、ベンチマークに限りなく近いリターンを上げることを目的として運用されています。 従って、インデックスファンドがどのようなリターンを挙げても、それはベンチマークである市場指数の動き次第ということになります。
しかしながら、投資信託に関する本やその他情報には「コストの差が長期投資では大きなリターン差に繋がる」と強調するものが多いですし、投資信託が表彰される場合にも、特にインデックスファンドにおいては、コストが安いものが選ばれる傾向があります。コストの大小に注目することは間違いではありません。しかしその前にベンチマーク選びを間違えますと、コストの差など問題にならないほどのリターンの差につながります。
株式投資を例にその差を見てみましょう。
2021年12月末時点の年率リターン(円建て : 配当含まず)
(出所) Bloombergのデータより筆者計算
投資するのは米国株かあるいは日本株か。その投資判断により過去には大きなリターンの差がついています。また同じ日本株に投資しても、TOPIXと日経225のどちらを選ぶのかによって、やはり大きな差になっています。
国内で販売されている日本株インデックスファンドの平均信託報酬率は年率約0.5%(注1)です。ファンド間でどれだけコスト差があったとしても、ベンチマーク間のリターン差に比べれば微々たるものです。インデックスファンドへの投資では、どのインデックスをベンチマークとするかが決定的に重要です。にもかかわらず、「最近上がっているから米国株にインデックス投資で」とか「ニュースで報道されるし馴染みがあるから日経225を」と考えて無雑作に選ばれる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
(注1)本連載の「目からウロコのアクティブファンドvsインデックスファンド 3」をご参照ください。
選択肢豊富なベンチマークの賢明な選び方
迷ったら分散投資を
それでは、どのように考えてベンチマークを選ぶのが良いでしょうか?
(1)ご自身の見通しや予想を生かした投資をされたい方
ご自身の見通し等を生かしやすい市場指数を選ばれるべきでしょう。「これから金利が上がると借入金の多い会社は厳しいだろうから、財務体質の強い優良銘柄中心に投資したい」ということであれば、その種のインデックスファンドも運用されています。例えば、現在日本株を投資対象として運用されているインデックスファンドだけでも、ベンチマークとしている市場指数は14種類を数えます(注2)ので、様々なお考えを実行するための選択肢は豊富でしょう。
ただし投資判断に必要な情報の得やすい市場指数をベンチマークに選ばれることが望ましいと考えます。テーマなどによりユニバースの一部の銘柄に特化している市場指数や、第三者が独自の基準で採用銘柄の選定を行う市場指数の中には、現在の状況を確認する情報を得るだけでも容易ではないものもあるでしょう。ましてや今後の予想に必要な情報となるとその入手が極めて困難となる場合もあると思われます。
しかしながら、ご自身でベンチマークを選ぶ場合、特にユニバースの一部の銘柄に特化するインデックスをベンチマークに選定される場合には、選定に伴うリスクをご自身で追加することになります。以下(2)も併わせてご参考にしていただき、そうした投資方法が賢明かどうか再考していただけましたら幸いです。
それでは、インデックスファンドが向いていると言われる投資初心者の方も含めご自身の見通しに自信がない方は、インデックス投資のベンチマークをどのように選べばよいでしょうか?
(注2)モーニングスターのデータを用いて計算