(2)ご自身の見通しや予想に自信が持てない方
前述の(1)よりもこちらのタイプの方が多数ではないでしょうか。市場の先行きを見通す自信をお持ちの方はそもそも投資信託は利用されないかもしれませんが。
自信を持ってベンチマークを選定できない方にとっての最善の選定方法は、できるだけ分散投資をすること、言い換えればできる限り幅広い投資対象を含むインデックスをベンチマークに選ぶことです。このように申し上げると、「なんだそんなことか…」と思われたり、「消極的な消去法での選択では?」と思われる方も多いかもしれません。しかしながら、以下の3つの理由により、この方法がインデックスファンド利用の効果を最大限に発揮する投資法であると考えます。
(理由1) パッシブ運用を徹底し、意図しないリスクを避けることができる
インデックス投資はパッシブ運用戦略を実行可能にした投資方法です。パッシブ運用とは、情報を収集・分析しても長期的に市場平均を上回る運用成果を獲得するのは困難と考え、市場予測や追加の収益を狙う投資判断をあえて行わない運用手法です。インデックスファンドでは、どの銘柄がより高いリターンを上げるかを予想せず、基本的にはインデックスの採用銘柄全てにインデックス構成比率通りに投資します。しかしながら、あるインデックスをベンチマークとして選定すると、結果としてそのインデックスが対象とする銘柄群をアクティブに選んで投資することになってしまいます。
例えば、東証一部上場全2,184銘柄(2022年1月末現在)(注3)を対象とする TOPIXインデックスファンドに投資する場合と、東証一部上場全銘柄のうち主要な225銘柄のみを対象とする日経225インデックスファンドに投資する場合を考えてみましょう。TOPIXの代わりに日経225をベンチマークに選ぶということは、結果として2,184銘柄から225銘柄をご自身で選んで投資していることにほかなりません。
(注3)東京証券取引所のH Pより
市場予測や独自の判断をしても高いリターンには繋がらないと考えて、あえてパッシブ運用を選択し、インデックスファンドを利用されるわけです。ご自身の予想等に基づいて(特に特化型の)インデックスを選ぶことで、実質的に投資銘柄をアクティブに選択するリスクをとることは賢明ではないとも考えられますし、投資の成功確率を低下させることにもなりかねません。最近人気の高いインデックスファンドのタイプの一つが、投資可能な世界中のすべての国の株式を対象とする全世界型株式インデックスファンドです。投資家の皆様が、あえて投資対象国を選ばず、すべての国でパッシブ運用を行うとの意図に基づいたベンチマーク選定の結果であると思われます。
なお、投資する資産(株式・債券・REIT)もあえて選択せず、さまざまな資産に分散投資をするのがバランス運用であり、資産選定に関してはパッシブ運用を行う投資手法です。しかしながら世界的に長引く超低金利と今後の金利上昇リスクの顕在化によって、これからの株式と債券の間の分散効果には変化が生じていると思われます。資産配分に関しては、少なくとも現在の市場環境下では、“迷ったら分散投資しすべての資産に投資する”という考え方は賢明ではないと思われます。この点については機会を改めてご説明したいと思います。
(理由2) より期待リターンの高い銘柄にも投資できる
より幅広い銘柄群を対象にするインデックスは、対象銘柄の幅が狭いインデックスに比べて、投資しにくい銘柄を、株式であれば小型株を、債券であれば低格付/高利回り債券を、投資対象に加える傾向があります。本稿の「目からウロコのアクティブファンドvsインデックスファンド3」でもご説明しました株式における小型株効果や債券における低格付け/高利回り効果により、インデックスの対象銘柄の拡大は、ファンド全体の期待リターンの引き上げにつながることがあります。ベンチマークの選定で迷う場合には、より対象銘柄の多いインデックスを選ぶことが賢明と考えます。
最近人気のある全世界型株式インデックスファンドを例にベンチマークの選択を考えます。このタイプでは主に2つの市場指数がベンチマークとして使われています。
(注4)2022年1月末現在
(出所)各指数のFact Sheet等から作成
他に理由がなければ、小型株も対象とし、より幅広い銘柄への投資を行うFTSEのインデックスをベンチマークとするインデックスファンドを選ばれる方が、賢明かつ積極的と考えられます。