住宅市場の動向を把握できる複数の住宅関連指標

ところで、米国の住宅関連指標は官民から多数発表されており、住宅市場の動向を把握するのは比較的容易である。最も馴染み深いのが米国商務省から発表される「住宅着工件数」で、総数だけでなく、一戸建て、集合住宅の区分別や、北東部、中西部、南部、西部の地域別にも示される。季節調整された数字は年率換算値(月次の値を12倍)で表される。直近の2021年6月は年率164.3万戸だが、2006年1月の同227.3万戸が住宅バブル時のピークであった(図1)。

 

供給側の統計の代表である住宅着工件数に対して、需要側の統計の代表は「住宅販売件数」である。新築は米国商務省から、中古は全米不動産協会から発表される。地域別だけでなく、月末時の販売在庫、価格帯別の販売件数、販売価格の中央値・平均値なども示される。直近の2021年6月は新築が年率67.6万戸、中古が同514万戸(新築、中古とも一戸建て)だが、中古が圧倒的に多いのが米国の住宅販売市場の特徴。住宅バブル時のピークは新築が2005年7月の年率138.9万戸、中古が2005年9月の同634万戸であった(図1)。

住宅関連指標は他にいくつもあるが、住宅の需要動向を端的に表していて、速報性、先行性に優れるのが、全米住宅建設業者協会が当該月中に発表する「住宅市場指数」である。これは住宅建設業者が住宅販売の現状、今後6カ月の見通し、住宅展示場への客足について、それぞれ「良い」「普通」「悪い」のいずれかで回答したアンケート調査に基づき、結果を0~100の範囲で指数化したもの。50が中立だが、実はこの住宅市場指数が2020年9月以降80を下回ることなく推移している(図2)。それまでは1985年の調査開始以来一度も80に達したことがなく、この1年近くはまさに異例の状況にある。