リーマンショックからの回復が遅れた住宅市場
2008年のリーマンショックは住宅バブルの崩壊がきっかけであった。住宅価格が上昇を続ける中、2000年代半ばにはサブプライムローンと呼ばれる、信用力の低い借り手への住宅ローンが米国で横行していた。また、保有する住宅を担保に、住宅価格の上昇による資産価値の増分を借り入れるホームエクィティローンも花盛りであった。
バブルの最中にはバブルと認識できないのが常だが、返済能力を超えた、あるいは住宅価格の永続的な上昇を前提にしたローンが行き詰まるのは自明である。しかも、金融のグローバル化の進展で、債務不履行の可能性が高いサブプライムローン等を担保にした証券化商品が世界中に拡散していたため、住宅バブルの崩壊で金融機関が玉突き式に多額の損失を被り、世界経済は「100年に一度」とも形容される金融危機に陥った。
金融危機から脱却すべく、FRB(米国連邦準備制度理事会)は、米国としては先例のない金融緩和を打ち出した。政策金利を事実上ゼロに引き下げただけでなく、量的緩和として国債、住宅ローン担保証券の多額の購入を実施した。財政政策との両輪で、米国景気は2009年6月には後退局面を脱したが、その後も金融機関、家計はバランスシートの調整に長い時間を要し、結局、家計の住宅ローン残高の減少が止まったのは2015年になってからであった。
他の住宅関連指標の回復も総じて緩慢であった。それでも、リーマンショックから10年超を経て、住宅市場の本格回復が期待されつつあったところで、新型コロナウイルスに見舞われた。