経済の動向を分析し、未来を見通すエコノミスト。そのレポートなどは金融業界のみならず、個人投資家から注目されることもしばしば。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト・熊野英生氏は、新著『エコノミストの経済・投資の先を読む技法』のなかで、ビジネスや投資に役立つ「先読み」の技法を解説しています。
不確実性が高まる時代、「未来のことは何もわからない」と悲観しがちですが、経験則にもとづき、粘り強く仮説を立てていけば、未来の大まかな方向性は見えてくるかもしれません。そこで今回は、景気と株価の関係について、熊野氏に読み解いてもらいます。(全3回の1回目)
※本稿は、熊野英生著『エコノミストの経済・投資の先を読む技法』(明日香出版社)より、一部を抜粋・再編集したものです。
主な経済サイクル
株価が景気サイクルと連動することを知っていれば、将来の株価の展開を予測できます。
しかし、景気サイクル分析は容易ではありません。というのも、この分野には「これが定説だ」と言えるような統一見解が存在しないからです。「これを読めば、景気サイクルがすべて分かる!」といった分かりやすい教科書的な解説も、ほとんど見当たりません。そのため、景気サイクルを理解するには、自分自身でさまざまな情報を取捨選択し、独自の解釈を加えていく必要があります。
学問の世界では、あたかもすべての専門家が同じ意見を持っているかのように語られることがありますが、現実はそう単純ではありません。専門家の間でも意見の相違や立場の違いは当然存在します。特に経済学の分野ではその傾向が顕著です。有名なジョークに「経済学者が10人いれば、11の説が生まれる」というものがあります。
10人の経済学者がそれぞれ異なる意見を主張し、さらにどれでもないという意見も出てくるため、合計で11の説が生まれるという皮肉を込めた表現です。つまり、一見専門家の意見が一致しているように見えても、実際には多様な考え方が存在することを示唆しているのです。
そうした背景から、経済分析を行う際は、自分の分析目的に合った分析手法を選び、独自の枠組みを構築することが不可欠になります。