Amazonが起こしたイノベーションの軌跡

ここで一度、ジェフ・ベゾスとAmazonの歴史を振り返ってみたい。

1964年にアメリカで生まれたベゾスは幼少期から科学に高い関心を持ち、工作に優れた才能を見せていたという。高校卒業後は世界でも屈指の名門校と名高いプリンストン大学で物理学とコンピュータ科学を学んだ。

大学卒業後、最初の就職先では若くして責任者のポジションに昇進。その後、職を転々とし、30歳にしてヘッジファンド会社で副社長に抜擢された。順調なキャリアアップの道を歩んでいたベゾスであったが、ちょうどその頃、世界的なインターネットバブルが巻き起こっているのを横目で眺めるうち、さらなるキャリア転換を意識し始める。その後、このムーブメントに参入しなければ必ず後悔することになると確信し、1994年にAmazonを起業させた。

創業当初からAmazonはインターネット通販事業を展開していたが、当時販売していたのは書籍のみであったという。まだまだインターネットが一般的ではない時代で、あまり前例のないビジネスモデルであったが、Amazonは順調に成長。1997年には上場を果たす。

その後は日用品の取り扱いや音楽配信サービスを開始させるなど、取り扱う商品の幅を徐々に広げていく。即日配送やレコメンデーションといった現在のECサイトのスタンダードともいえるサービスもAmazonが先駆けとなった。結果、Amazonは20年で株価が約400倍に成長し、今やアメリカを代表する世界的企業の一社に数えられ、アメリカを代表する株価指数「S&P500」への影響も一定数持っている。

2021年2月2日に発表されたベゾスの退任は、業界からの完全な引退ではなく、今後も取締役会長として、買収や事業戦略策定などの事案には積極的に関わっていく見通しだ。

また、CEO退任後はベゾスが100億ドル(約1兆830億円)の私財を投じて設立した「ベゾス・アースファンド」の活動にもこれまで以上の時間を割いていくと考えられる。2020年に設立したこの基金は、気候変動への対策に取り組んでいる研究者や活動家、NGOの支援を行っている。ベゾスの手紙ではAmazonが今後、環境問題に取り組んでいく姿勢について語られたが、その取り組みはベゾス自身の考えに強く影響されているのかも知れない。