Amazon.comの創業者ジェフ・ベゾスが2021年2月同社CEOを退任することを発表した。退任後は会長職へ就任する予定だが、この改革がAmazonにどのような影響を与えるかに注目が集まっている。ベゾスがCEOとして株主へ宛てた最後の年次書簡から、今後のAmazonを知るヒントを見つけたい。

「最後の手紙」で注目すべき2つのポイント

2021年4月に公開された、ジェフ・ベゾスCEOから株主へ宛てた最後の年次書簡は日本でも話題となった。中でも注目したいのが、「Amazon倉庫の労働環境についての言及」と「気候変動への今後の取り組み」の2つの内容だ。

Amazon倉庫の労働環境は非常に過酷であるというニュースが度々報じられてきた。休憩がなく、実現が難しい作業ノルマが課されているというのだ。報道を受け、アメリカをはじめとした世界各国では避難の声が上がった。しかし、ベゾスは手紙の中で以下のような反論を綴っている

「When we survey fulfillment center employees, 94% say they would recommend Amazon to a friend as a place to work.」
(倉庫に勤務する従業員を対象とした調査では、94%がAmazonを自分の友人に勧めることのできる職場だと回答している)

「休憩を取らせない」「理不尽な作業ノルマを課している」といった報道も事実ではないと主張。今後は100%の従業員が胸を張って友人に職場を勧められるよう、「地球上で最高の雇用主であり、最も安全な職場を目指す」という決意表明まで行っている。

また、顧客と従業員、どちらもが満足できる仕組みを必ず築き上げるとも書簡では語られている。

経営面から見れば、顧客と従業員の満足度は必ずしも比例するわけではない。例えば、従業員の賃金を上げれば、そのコストが顧客の支払う代金に上乗せされ、顧客満足度が下がる可能性も否めない。実際にベゾス本人も、従業員の満足度を高めることは、これまで同社が掲げてきた顧客第一主義の妨げとなる可能性を認めている。しかし、これまで数多の革新的な仕組みで業界をリードしてきた発明者としての自負から、ベゾスは顧客と従業員の満足度を両立した理想の企業も作ってみせると決意を新たに意気込んでいる。

また、ベゾスは労働環境だけでなく、「気候変動への今後の取り組み」について次のように書いている。

「 The economy in 2030 will need to be vastly different from what it is today, and Amazon plans to be at the heart of the change. 」
(2030年の経済は現代とは大きく違うものになっていなければならない。Amazonはその変化の中心となることを目指している)

Amazonはこれまで2030年までに自社で使用するエネルギーの100%を再生可能エネルギーに切り替えることを目標としていた。しかし、この書簡では5年も前倒した2025年までの実現に向けて前進していくことを宣言している。

再生可能エネルギーの本格的な導入は大規模な設備投資が必要となるため、会社にとって大きな負担となることは明らかだ。にもかかわらず、Amazonのような巨大企業が急速的に変革を進めるのは、SDGsへの取り組みをリードしていくことが企業価値につながると判断してのことだろう。

現に、2020年4月にAmazonは世界5ヵ国で風力・太陽光エネルギーの9件の新規プロジェクトを立ち上げることを発表。これによりAmazonは世界最大の再生エネルギー購入企業となっており、目標達成に向けて着実に進んでいることが覗える。