税額を減らすために一番効率的なのがiDeCo。だが、社会保険料にも注目
講師
税額計算の流れが理解できたところで、税額を減らすにはどうすればいいのか、改めて考えてみたいと思います。先ほどご紹介した(1)から(3)の式をご覧ください。
講師
今度は逆に(3)の式から見ていきます。税額を減らすにはどうすればいいと思いますか?
参加者
税率を下げられればいいのですが、それは課税所得に応じて決まるものですよね。税率は動かせないとすると、課税所得を減らすことだと思います。
講師
そうですね。それでは、(2)の式で課税所得を減らすにはどうすればいいのか、考えてみてください。
参加者
所得を減らす、あるいは所得控除を増やす、ということですね。でも、(1)の式から経費はあまり動かせるものではなさそうですし、そもそも所得を減らすってナンセンスなことですから、できるだけ所得控除を増やすことが税額を減らすためのコツになると思います。
講師
おっしゃる通りですね。そして、この所得控除を一番効率的に増やせるのがiDeCoなのです。なぜなら、iDeCoで積み立てた掛金の「全額」が所得控除としてカウントされるからです。
参加者
そういえばそうですね。年末調整で手続きした生命保険料控除も、所得控除としてカウントされる保険料には上限がありました。所得控除の中では「iDeCo、最強!」って感じですね(笑)。
講師
ははは。でも実は上には上がいて、ある意味、iDeCoよりも強力な所得控除があるんですが、なんだか分かりますか?
参加者
えっ、iDeCoって最強じゃないんですか……?
講師
それは、社会保険料控除です。
健康保険や国民年金、厚生年金保険の保険料は社会保険料控除として「全額」が所得控除としてカウントされますし、さらに、納税者が支払った配偶者や子どもの社会保険料も納税者の所得控除になるのです。
iDeCoは掛金の全額が所得控除になりますが、対象になるのは本人分だけですから、「社会保険料、最強!」って感じですかね(笑)。
参加者
ええ~っ! そうだったんですか……。
じゃあ、所得控除の面から考えても、国民年金や厚生年金保険って、結局はお得なんですね。「iDeCoは税金面で有利」くらいのイメージでしたが、詳しい仕組みを見て、社会保険を見直すきっかけになりました。
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最後は社会保険の話になりましたが、これも税金の仕組みや税額計算の流れを理解できたからこその気付きだと思います。もちろん、最初に疑問に思ったiDeCoの所得控除メリットへの理解も深まったのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、私は税金の専門家ではありません。ですから、専門家の方からすれば、私の説明や解釈の中には厳密さに欠ける部分があるかもしれません。でも、専門家でないからこそ、税金のことをある程度理解するためのコツは、細かな定義や分類に頭を悩ませることではなく、ざっくりと原則と例外に分けて考えることではないかと私は思っています。何よりも、税金のことを人任せの他人事ではなく、自分事として考えるきっかけが、iDeCoにはあると考えています。