利金と分配金で、ふたりの娘たちの資産形成をサポート

2人の娘さんへの相続に関しては、沢田さん本人が亡くなってからではおそらく相続税の対象になりますし、そもそも沢田さんは50代ですから、相当先の話になります。そこで、元金を減らすことなく、投資信託の分配金を活用して少しずつ贈与していく形をご提案しました。

分配金とひと言で言っても、その原資が運用益なのか、元本を取り崩しているかによって大きく意味が違ってきます。すでにお持ちの毎月分配型ファンドは元本から配当を出している「タコ足分配」となっており、これでは保有するほど元本が減ってしまいます。分配金そのものは悪いものではありませんので、利益の範囲内で適正な分配を出す商品に乗り換える必要がありました。また、合わせて沢田さんが持っていたテーマ型投信は自動運転の関連銘柄に投資する商品で、価格変動の大きい商品です。そのため、こうした商品を手放し、より安定したポートフォリオを組むことにしました。

これらを売却して得た1000万円に、定期預金から3000万円をプラスした4000万円で、日本株、米国株、金、海外債券、REIT(不動産投資信託)の投資信託を購入しました。全部で年に100万円(税引き後)のリターンが期待できるポートフォリオです。

このポートフォリオから得られるであろう100万円の利益を、2人の娘さんに年50万円ずつ贈与していくことにしました。50万円であれば贈与税の対象にもならないので、効率的に資産を移転できます。ただ、毎年リターンが必ず100万円出るわけではなく、大きく上がる年もあれば下がる年もあるのが運用です。大きく上がった時は多めに利益を確保し、その分、下がった時は売却はなしにしましょう、とご案内しました。

次は沢田さんご自身の生活です。突然の相続で資産家になったものの、長く普通の専業主婦として堅実な生活をしてきたこともあって暮らしぶりは質素で、当面は生活費として資産を取り崩す必要はなさそうです。ただ、年に1回、友人と海外旅行に行くのが楽しみなので、その費用として20万円程度が必要だということでした。

そこで、この旅行費用についても元本を減らさずにインカム収入から捻出することにしました。そのための投資先として選んだのは、劣後債です。劣後債は社債の一種で、発行体の企業が破綻するなどした際に弁済を受けられる順位が低い代わりに、利回りが高く設定されています。破綻した際の優先順位が低いので債券としてはハイリスクハイリターンですが、一切の弁済を受けられない株式と比べるとローリスクです。このため、劣後債は債券と株式の中間的な位置付けであるとも言われます。

沢田さんの場合は、2つの劣後債を組み合わせて3%前後の利回りが狙える1000万円のポートフォリオを組みました。税引き後で年20万円程度の利金を得られるので、これを毎年の旅行費用に充てることにしました。

他社で保有している仕組債については、途中で売却すると大きな損失が出てしまうのと満期が近かったので、これだけはそのまま保有することとしました。