アドバイスのニーズは地方にこそあるはず

IFA事業開始からわずか3カ月でコロナショックを迎えたHACOだが、預り資産は順調に積み上がっているという。好調の要因は主に既存顧客の下げ局面での買い増しニーズによるもので、いわゆる二番底、三番底に備え、10カ月前後にわたる期間限定での積立投資も提案しているため、今後も流入が続く見込みだ。

さらに、もともと保険の既契約者向けフォローを年1回実施し、「遅かれ早かれ、リーマン・ショック級の下げが来る。長期で捉え、下がっても慌てずに、場合によっては買い増しを」といった基本的な考え方を伝えていたことも功を奏しているようだ。「新規のお客さまの獲得には確かに多少の影響は出ていますが、今はまさに、こうした取り組みの真価が発揮されているのかもしれません」と、どっしり構える尾山氏。

ただ、地方での展開という切り口で見ると、コロナ禍が今後に及ぼす影響は未知数だ。「Webセミナーやリモートの個別相談が浸透することで、『地元のFPさん』という安心感、親近感が武器でなくなってしまう可能性はあります」と、尾山氏は現在の状況変化を冷静に捉えながらも、今後も地域に根差した金融アドバイザーとして活躍の場を広げていく構えだ。

地銀や証券会社が強いと言われる地方でも、一定の目的を持って銀行や証券会社に向かう顧客と、不安を抱えて相談に来るHACOの顧客は実はさほど重ならない。加えて、広報戦略をはじめ、工夫次第で成長できる伸びしろがある分、「地方にはメリットがあるとすら感じている」という。IFA事業の展開により金融商品のアドバイスも可能になったことで、証券会社などから大きな金額の移管に成功する事例も出てきた。

「これほど顧客に深く関わり、人生すらも変え得る職業は、希少と言っていいでしょう。ネットが普及しても、自力で有益な情報にたどり着ける人はひと握りで、正しいアドバイスのニーズは忙しい現役層や、都市部から離れた地方にこそあるはず。顧客からのご支持を集め、IFAの知名度を地方から高めていければと思います」と尾山氏は意気込む。

足元のコロナショックは、図らずも長期的なアドバイスを特徴に掲げるIFAチャネルの実力を試す機会にもなっているようだ。目先のリターンにとらわれないぶれないアドバイスを続けるIFAが全国各地で活躍するようになれば、浸透に弾みもつくだろう。IFAが「顧客の伴走者」の代名詞となれるかは、地方発のIFAの台頭にかかっているのかもしれない。