けんかは平行線のまま

「パンクって……大げさじゃない?」

「大げさなんかじゃない。今の状態で仕事も家事も私はやってられないわ。だからホームヘルパーを雇おうと思ってる」

美香の宣言に幸次は怪訝な顔つきになる。

「ホームヘルパー?」

「最近、家事代行サービスってのがあるみたいでね。私の友達も使ってるって聞いたから、うちも使ってみようかとって思ってるの」

そこでようやく幸次が顔が美香を向いた。

「いやいやいや、待てよ。そんなの勝手に決めるなよ」

「……え? なんで?」

「家事代行なんてそんなの金持ちがやることだろ? うちみたいな一般庶民がそんなの使っていいわけがないだろ? 何をおかしなことを言ってるんだよ?」

「別に私の友達は金持ちとかじゃないから」

「だとしても家事なんかのためにお金を使うってそんなの贅沢だよ。料理なんて別に簡単にできるし、洗濯だって乾燥機もついてるんだから簡単だろ。それに、知らない人が出入りするなんてやだよ」

美香は二つ返事で了承してくれると思っていたから、幸次がここまで反対してくることが意外だった。

「だって、幸次は全然やってくれないじゃない」

だから思わず不満が漏れた。

「……は?」

「家事なんて簡単なんでしょ? だったら頼んだことくらい……ううん、頼まなくたってちゃんとやってよ。そもそも2人で家事は分担するって約束だったんだから」

美香がそう言うと、幸次は鋭い目線を向けた。

「……俺だって手伝ってるだろ」

「それ、手伝うっておかしいでしょ? 2人で暮らしてるのに、どうしてお手伝いさん気分なの?」

「そういう意味じゃないだろ。揚げ足とるなよ。ったく……とにかく、どこのどんなやつかも分からない人間を家にいれるなんて絶対無理だから」

幸次は立ち上がって寝室に向かい、苛立ちをあらわにするように強く扉を閉めた。

その日、美香は幸次と同じベッドで眠る気にはなれず、毛布にくるまってソファで眠った。

●仕事の負担が増える中、家事も全て押し付けられ限界に達した美香。家事代行サービスの利用を提案するが、夫・幸次は「贅沢だ」と猛反対。2人は衝突し…… 後編【「俺がやると怒るだろ」家事をしない夫の言い分に妻が気づいた“夫婦間の問題”…家事代行を取り入れて起きた変化とは】にて、詳細をお伝えします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。