「まさか、この年になっても子どもの生活を支え続けることになるとは思っていませんでした」
高齢期の親から、こうした声を聞くことは決して珍しくありません。
子どもが実家に戻り、そのまま長年同居を続ける、いわゆる「子ども部屋おばさん・おじさん」の問題は、単なる家族関係の話ではありません。親の老後資金や生活設計を大きく揺るがす経済問題でもあります。
今回は、70代後半の夫婦が抱える「還暦目前の娘」をめぐる不安を通じて、そのリスクと現実的な向き合い方を考えます。
「この子は、いつ自立するのだろうか」不安を抱える78歳の父
地方都市で暮らす佐藤健一さん(78歳・仮名)は、妻の恵子さん(79歳・仮名)、そして長女の法子さん(55歳・仮名)と3人で暮らしています。
佐藤さん夫妻は、若い頃から美容室を営んできました。
自宅の一角を店舗にした昔ながらの美容室で、長年通い続けてくれる常連客も多く、売上は安定しています。年齢を重ねた今も現役を続けています。
本来であれば、「そろそろ仕事をセーブして、ゆっくり老後を楽しむ」という選択肢も取れるはずでした。
しかし、佐藤さんの頭から離れない存在があります。
それが、同居する娘・法子さんの存在でした。