日本の消費は底堅く推移~4-6月期GDPの消費上振れ、7月家計調査もしっかり~
このように、賃金や雇用環境がしっかりしていれば、個人消費も崩れることはありません。内閣府が8日に発表した4-6月期の実質GDP改定値は、「民間最終消費支出」が1次速報の前期比0.2%から同0.4%に上方修正されたことを主因に上振れ、前期比年率1.0%から同2.2%に上方改訂されました。
総務省が5日に発表した7月家計調査でも、実質消費支出が前年比1.4%、実質消費支出(除く住居等)が前年比0.2%と、いずれも3カ月連続の増加となっています(名目は前者が前年比5.1%、後者が前年比3.8%)。名目および実質消費支出の前年比は、緩やかな回復傾向を維持していることが図表6から見て取れます。
<図表6 「家計調査」の名目・実質消費支出>

日銀は年内様子見の後、来年1月に利上げへ
以上のように、国内経済が底堅く推移し、加えて消費者物価に上振れリスクが高まりつつある状況を踏まえると、日本銀行が年内に利上げするのではないかとの思惑が出ても不思議ではありません。9月9日にもブルームバーグから「日銀は政治混迷でも年内利上げ排除せず、今月は政策維持へ-関係者」との記事が配信されています。
しかし、これまで一貫して述べてきたとおり、(1)トランプ関税の影響見極めにまだ時間がかかること、(2)FRBの年内複数回の利下げが確実視されていること、(3)政府がトランプ関税の影響に備えて経済対策を打とうとしていること、(4)次年度予算の閣議決定を控える12月の利上げはそもそも難しいことなどから、年内利上げのハードルは高いとみています。
ブルームバーグが配信した上の記事では、事情に詳しい複数の関係者の話として、「国内政治情勢が混乱する中でも、年内利上げの可能性を排除しない」「経済・物価情勢は7月の最新シナリオに沿った動きと判断しており、年内に環境が整う可能性も引き続き視野に入れている」「米関税を踏まえた企業行動や新政権の政策など金融政策判断に重要な材料が、今秋以降にはそろってくる可能性が大きい」といった声を紹介しています。
確かに、政策委員の一部には、年内の利上げを展望する意見もあるでしょう。しかしながら、現実問題としてそれが可能かどうかを、冷静に考える必要があります。そうした観点から、市場との重要なコミュニケーターと位置づけられる氷見野良三副総裁が、2日の講演で以下のように述べたことは重要な意味を持ちます。
通商政策の影響はいずれ顕在化し(中略)日本経済の成長ペースは鈍化するものと考えられます。ただ、影響が思ったより小さくなる可能性も、大きくなる可能性も、両方考えられるところで、当面は大きくなる可能性の方により注意が必要ではないかと考えています。
(出所)日本銀行
この氷見野副総裁が言う「当面」が、9月18~19日に開催される金融政策決定会合までのことを指しているとは考えにくく、自民党総裁選が10月4日、秋の臨時国会がその後になることなどを踏まえると、これまで述べてきたとおり、日銀の次の利上げは来年1月になるとみておくのが最も自然だと思われます。