日銀の悩み(3)~10月に利上げするとすればどういう理屈で?~

 ならば早めに利上げすれば良い、となるわけですが、そのハードルが意外と低くないことは先週のレポートで指摘したとおりです。

▼先週のレポート

日銀「主な意見」、10月、12月、来年1月のいつでも利上げできる姿勢示す(愛宕伸康)

 7月の「主な意見」である程度タカ派色を強めて、10月、12月、来年1月のいずれでも動く可能性があるというメッセージを日銀は発信していますが、現実問題として、以下の理由から年内利上げの実現は難しいと言えます。

(1) 今年後半にかけて米国景気の鈍化が見込まれる中、FRBが複数回にわたり利下げする可能性が高まっていること。
(2) トランプ関税の影響に備え、中小企業対策などに万全を期すという政府方針の下で、秋の臨時国会において補正予算の編成が見込まること。
(3) 12月になると来年度予算政府案の閣議決定を控えていること。

 トランプ関税の影響を巡る不確実性が低下し、来年春闘の堅調が見えてきた来年1月に利上げを再開するというのが最も自然な流れであり、日銀のメインシナリオもそうした展開を想定したものになっていると思われます。筆者のメインシナリオもそうです。

 しかし、為替円安がのっぴきならないほど進むとか、物価上振れリスクが大幅に高まるような状況となれば、10月利上げの可能性もゼロではありません。その場合、どのような理屈でもって利上げを実施するのか、説明がかなり難しいというのが実情です。

 というのも、上述したとおり、日銀のメインシナリオは、トランプ関税の影響を受けて成長ペースが今後鈍化していき、それに伴って消費者物価の基調的な上昇率も伸び悩むというものです。そのメインシナリオを上方修正するのでしょうか。それとも10月の「展望レポート」で物価見通しを再度上方修正し、物価上振れリスクを強調するのでしょうか。

 おそらく日銀は、10月利上げの是非を巡って、その辺りのロジックを熟慮しながら、9月18~19日に開催する金融政策決定会合でどういった布石を打つのか、あるいは打たないのか、頭を悩ませているのではないでしょうか。10月利上げとなった場合、日銀の説明ぶりが注目されます。