日銀の悩み(1)~景気の予想外の底堅さ~

 経済・物価指標の不確実性に悩まされているのは日本銀行も同じです。8月15日に内閣府が発表した4~6月期の実質国内総生産(GDP)は前月比0.3%(年率1.0%)と、思いのほか堅調でした。

 0.3%で堅調?と思われるかもしれませんが、潜在成長率が前期比0.15%(年率0.6%)の日本にとっては、0.3%という伸びは上出来です。振れの激しい前期比よりも、ある程度なだらかな前年比を見ると、GDPの堅調さがより明確です(図表3)。

図表3 日本のGDP成長率(前年比)

注:シャドーは日本の景気後退期。 出所:内閣府、楽天証券経済研究所作成

 しかし、7~9月期はトランプ関税の影響から輸出が減少し、実質GDP成長率は鈍化するとみています。筆者の見通しでは、前期比マイナス0.1%(前期比年率マイナス0.3%)という小幅なマイナス成長になると想定しています。

 日本銀行でも、日本経済の先行きのメインシナリオを、「先行きは、各国の通商政策などの影響を受けて成長ペースは鈍化するものの、その後は海外経済が緩やかな成長経路に復していく下で、成長率を高めていくとみられる」としており、そうした見通しの下で金融政策運営を行っています。

 問題は、本当に「各国の通商政策などの影響を受けて成長ペースは鈍化する」のかです。米経済の減速や米国向け輸出の下振れなどを前提に、われわれも日銀も先行きを見通しているわけですが、本当にそうなるか慎重に見ていく必要があるでしょう。米アトランタ連邦準備銀行のGDPナウは7~9月期の米実質GDPを前期比年率2.5%(8月15日現在)と予測しています。