就職氷河期世代とは、おおむね1993年から2005年くらいまでの間に新卒で就職活動を行っていた世代のことを指します。この時期は、正社員の仕事がなかなか見つからない、非正規で働かざるを得ないといった厳しいものでした。ニュースで就職氷河期世代の話題が報道されると、筆者はあるご家族のことを思い出さずにはいられません。
書類選考で落とされ続けた就職活動
田端慎吾さん(仮名・当時21歳)は、理系の私立大学に在籍していました。慎吾さんが就職活動を開始したのは、就職氷河期の中でも特に厳しい時代と言われている2003年頃。
企業は採用人数を絞っており、慎吾さんよりも優秀なライバルは数多く、慎吾さんが内定をもらうのは並大抵のことではありませんでした。
慎吾さんは100社近くの企業に「資料を送ってください」とはがきを出しましたが、返事は10社程度。さまざまな企業説明会にも参加し、エントリーシートを何枚も書きました。しかし、その努力が実ることはありませんでした。書類選考で落とされる、1次選考は通っても2次選考で落とされる。そのようなことが何度も続いたのです。
「俺はこの世に必要とされていないのか?」
不安な気持ちに包まれることもありましたが、何とか心を奮い立たせ、慎吾さんは必死に就職活動を続けました。
残された時間も心の余裕もなくなっていた慎吾さんは「就職できるなら何でもいい」と、望まない職種ではありましたが小さい会社の経理職に就くことになりました。