25年3月期は18%の最終増益を予想 競合が苦戦のなかで強気の理由とは
最後に神戸製鋼所の業績の見通しを確認しましょう。
2025年3月期は経常利益の減少を予想します。減益の主因はコスト増と電力の一過性損益のはく落です。とはいえ、電力を除く各セグメントはおおむね順調です。素材ビジネスは素形材を中心に堅調で、機械ビジネスも前期並みまたは増益を予想します。
また、純利益は大幅な増益の計画です。固定資産の売却益のほか、関西熱化学の連結子会社化に伴う負ののれん(※)発生益の計上を予定します。これら特別利益の影響もあり、通期の純利益は前期比18.7%増の1300億円を予想します。
※負ののれん:のれんは買収額と純資産の差のこと。一般に買収額は純資産を上回るが、反対に下回る(安く買える)場合は「負ののれん」と呼ぶ。のれんは資産として貸借対照表(B/S)に計上される一方、負ののれんは特別利益として損益計算書(P/L)に計上されることが多い
【神戸製鋼所の業績予想(2025年3月期)】
・売上高:2兆5800億円(+1.4%)
・経常利益:1400億円(-13.0%)
・純利益:1300億円(+18.7%)
※()は前期比
※同第3四半期時点における同社の予想
出所:神戸製鋼所 決算短信
堅調な経常利益と特別利益の影響から、神戸製鋼所の利益見通しは同業他社のなかでは比較的良好です。純利益ベースで日本製鉄は前期比43.6%減、JFEホールディングスは同51.9%減を見込みます。
鉄鋼業界の経営環境は足元で厳しさを増しています。グローバルで需要の低迷や市況の悪化が生じており、大手2社は苦戦しているようです。神戸製鋼所は輸出比率が低く、また鉄鋼以外の収益も大きいことから、影響は相対的に抑えられていると考えられます。
【主な鉄鋼メーカーの予想純利益(2025年3月期)】
・日本製鉄:3100億円(-43.6%)
・JFEホールディングス:950億円(-51.9%)
・神戸製鋼所:1300億円(+18.7%)
※()は前期比
※同第3四半期時点における同社の予想
※日本製鉄とJFEホールディングスは国際会計基準、神戸製鋼所は日本基準
出所:各社の決算短信
神戸製鋼所は、第3四半期の決算説明会では翌2026年3月期の業績見通しにも言及しました。経常利益は一過性影響を除き1200億~1300億円がベースで、ここに収益改善の施策を積み上げると説明しています。
また、特別損益は2026年3月期にも発生する見込みです。2025年3月期に間に合わなかった資産売却益を計上するほか、政策保有株式の売却も予定します。また税額控除も発生を見込みます。これらは純利益の押し上げに寄与すると考えられます。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)