5カ年計画の最終年度が開始、達成の期待大 配当目標には到達できるか

最後に中期経営計画の取り組みを押さえましょう。日本電気は2021年5月、5年間におよぶ比較的長い経営計画を公表しました。今期(2026年3月期)はその最終年度にあたります。

中期経営計画は、成長事業へ優先的に資源を配分し成長を目指すものです。成長事業は日本を含むグローバルでの行政および金融機関のデジタル化やグローバル5G通信、そして国内IT事業などです。そのほかはベース事業と区分し、収益性の改善に取り組むとしました。

計画はおおむね順調なようです。2025年3月期の予想業績は、目標値に肉薄しています。特に利益が伸びており、2021年3月期比で営業利益は調整後で45.9%増、Non-GAAP(※)で85.6%増と大きく成長しました。1年を残し目標にほぼ達していることから、本中期経営計画は着実な達成が見込まれます。

※Non-GAAP営業利益 :営業利益から買収で認識した無形資産の償却費とM&A関連費用、および株式報酬や構造改革関連費用・減損損失などの一過性損益を控除したもの

【中期経営計画の主な財務目標(~2026年3月期)】

※EBITDA=売上総利益-販売管理費+減価償却費・償却費 ※ROIC=(調整前営業利益-みなし法人税<30.5%>÷(期末有利子負債+期末総資産<被支配株主持分含む>) ※2025年3月期予想は同第3四半期時点における同社の予想

出所:日本電気 中期経営計画
 

ただし、配当金の目標は達成がやや厳しい状況です。期間中は配当性向で平均30%程度を目指していました。しかし、2024年3月期までの平均は22.2%にとどまります。平均配当性向30%を達成するには、残り2期でそれぞれ41.7%以上が求められます。

【日本電気の配当性向(2022年3月期~2024年3月期)】

・2022年3月期:19.3%
・2023年3月期:25.9%
・2024年3月期:21.4%

出所:日本電気 決算短信

日本電気は利益が拡大傾向にあるため、配当性向を高めるには相応の配当金が求められます。これまでの姿勢を踏まえると、期間中の平均配当性向は30%を下回る見込みです。

なお、日本電気は2022年に約300億円の自社株買いを実施しました。これを踏まえた総還元性向は2024年3月期までの3期累計で29.3%と、目標の30%程度にほぼ達します。自社株買いを考慮すれば、株主還元もおおむね計画どおりといえそうです。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)