株価2.5倍へ布石 既存事業と新規案件に1.7兆円を投資
最後に中長期の経営方針を確認しましょう。丸紅は2031年3月期に時価総額10兆円超を目指しています。足元は4兆円ほど(※)ですから、株価を2.5倍超へ値上がりさせる計画です。
※2025年3月14日終値(自己株式を除くベース)
この実現に向け、丸紅は2025年2月に2028年3月期を最終年度とする新しい計画を公表しました。成長を加速させる期間とし、純利益およびキャッシュフローを拡大します。同時に株主還元も強化し、投資家の支持も集める考えです。
【中期経営計画の主な財務目標<~2028年3月期>】
・純利益:6200億円以上(5000億円)
・3カ年累計の基礎営業キャッシュフロー:2兆円(1兆7200億円)
・総還元性向:40%程度(30~35%程度)
・ROE:15%(15%程度)
※()は2025年3月期の見通し
出所:丸紅 中期経営計画
成長は既存事業の磨き込みが中心です。農業資材の販売や米国の中古車販売金融などで規模の拡大を目指すほか、AIやDXを活用した生産性の改善にも取り組みます。期間中の予想増益額は、一時的要因を除いた実態純利益ベースで900億円です。
増益には投資も貢献する見込みです。実態純利益ベースで既存の投資案件が500億円、新たな投資案件で400億円の押し上げを目指します。新たな投資は食品マーケティング事業や電力の卸売・小売事業、北米モビリティ関連事業などを想定します。
成長に向け資本も振り向けます。期間中は新規投資とCAPEX(※)で1兆7000億円を投じる計画で、うち既存事業の磨き込みには6000億円を、新規の投資案件には1兆円を割り当てます。また、将来の種まきとして新エネルギー関連事業や宇宙関連事業などにも1000億円を投じます。
※CAPEX:既存投資案件の価値を維持・向上するための追加的な設備投資
文/若山卓也(わかやまFPサービス)