金利が上がってトクする人、損する人
こうなると、日銀も金融緩和を継続している合理的な理由がなくなります。そのため、長期金利に上限を課していたイールドカーブコントロールを撤廃し、加えて政策金利である無担保コール翌日物金利のマイナス金利政策を解除するに至ったのです。結果、前述したように日本の短期金利、ならびに長期金利が上昇へと転じました。
では、金利上昇によってトクをする人、損をする人は誰でしょうか。
基本的に有利なのはお金を運用する側であり、不利なのはお金を借りる側です。
まず預金は有利です。金利が上昇すれば、利息収入が増えていくからです。ただし、金利上昇のスピードと満期をどの程度にするかは重要な問題です。たとえば2025年2月末時点における10年物定期預金の利率は年0.400%ですが、1年物は0.125%です。一見すると10年物が有利に見えますが、今後、金利がどんどん上がっていくことになると、1年ごとに新しい利率が適用される1年物の方が有利になる可能性があります。
証券会社の総合口座にセットされているMRFも、金利上昇局面では有利な選択肢になります。こちらの分配率は0.270%前後で推移していますが、MRFの実績分配率は基本的に短期金利に連動しています。日本銀行が今後、政策金利を引き上げていくのであれば、実績分配率は上昇するでしょう。
逆に金利商品で不利になるのが債券です。特に償還まで同一の利率が適用される固定金利型の長期国債は、金利が上昇すると債券価格が下落します。もちろん10年後の償還まで保有し続ければ元本割れしませんが、償還前に売却すると、その時点にかけて金利が上昇した場合、安くなった債券価格で売却することになるため、下手をすると元本を割り込む恐れがあります。
ただし、個人向け国債の固定金利型5年満期なら、満期前に売却しても元本割れにならないので、選択肢のひとつにはなるでしょう。2025年3月に発行されるものの利率は1.03%です。
また個人向け国債には変動金利型10年満期というタイプもあります。こちらは満期までの期間が10年と長いのですが、半年ごとにその時の金利情勢に応じて利率が見直されます。3月発行分の利率は0.92%です。今後、長期的に金利が上昇するという前提で考えれば、おそらく最も有利な選択肢といえるでしょう。