金利が上がっている、超シンプルな理由は…
このように短期金利も長期金利も、そろって上昇しているのですが、理由はとても単純で、物価が上昇しているからです。
消費者物価指数のうち、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」の前年同月比を見てみましょう。なぜ生鮮食品とエネルギーを除くのかというと、生鮮食品の価格は天候の影響を受けやすく、またエネルギーは国際政治の影響によって価格が左右されるからです。つまり景気の良しあし以外の要因で消費者物価指数がブレるのを排除した指数、といっても良いでしょう。
この数字は1999年10月から2007年10月までの8年間にわたり、前年同月比でマイナスを続けました。そして、2009年5月から再びマイナスになり、それが2013年7月まで続きました。これがデフレ経済です。
2013年1月から政権を運営した第2次安倍政権は、このデフレから脱却させるため、大幅な金融緩和を実施しました。それがマイナス金利であり、量的・質的金融緩和でした。つまり政策金利を限りなくゼロ、さらにはマイナス圏に誘導するのと同時に、国債やETF、J-REITなどを市場から買い入れることによって、世の中にたくさんのお金が流通するようにしたのです。基本的に、世の中に流通するお金の総量が増えれば、そのお金が投資や消費に回り、景気が浮揚して物価が上昇するとされています。当時、政府・日銀は消費者物価指数の上昇率が2%を持続できるようになるまで、金融緩和を継続するとしました。
でも、どれだけ金融を緩和しても、物価目標である2%にはなかなか到達しませんでした。2014年4月から2015年3月までは2%でしたが、これは消費税率が5%から8%に引き上げられたからです。そして、消費税率引き上げによる物価の押し上げ効果がなくなった2015年4月以降は、再び2%に到達できない水準に落ち込みました。
消費者物価指数に変化の兆しが現れたのは、2022年6月あたりからです。世界ではコロナ禍による行動制限が徐々に解かれ始め、経済活動が正常化に向けて動き出したものの、コロナ禍でモノの供給力が大きく後退していたことから、盛り上がる需要に供給が追い付かず、物価に上昇圧力がかかりました。加えて2022年2月に、ロシアがウクライナに軍事侵攻したため、資源・エネルギー価格が上昇し、それらが日本の物価を押し上げました。
消費者物価指数の前年同月比は、2023年7月、8月と4.3%まで上昇しました。その後、やや落ち着いてはきましたが、2025年1月のそれは2.5%と、政府・日銀の物価目標を、かれこれ2年3カ月にわたって超えています。