加速する技術革新のスピード

一方、技術革新の波は近年ますます存在感を増しています。たとえば毎年発売されるiPhoneの新機種は、単なる新製品の投入にとどまらず、関連する部品産業やソフトウェア産業など幅広い分野に経済効果をもたらします。さらに技術の進歩は人々のライフスタイルを変化させ、新たな需要を生み出します。

スマートフォンの普及はその典型例ですが、技術革新の影響はスマートフォンに限りません。コロナ禍をきっかけにリモートワークが急速に普及し、オンライン会議ツールが働き方に大きな変化をもたらしました。また、生成AIであるChatGPTは登場して間もないながら、さまざまな分野で活用が始まっており、今後社会に大きな影響を与えると予想されています。

これらは2020年から2022年にかけて普及した比較的新しい技術革新です。さらに遡れば、2007年に登場したiPhoneは現代社会に大きな影響を与えた革新的な製品でした。1995年に登場したWindows 95はパソコンをビジネスの現場に普及させ、業務の効率化に大きく貢献しました。

こうした流れから、従来は50年周期と考えられていた技術革新の波が、近年では10年から15年という短い周期で発生しているとみられます。さらにデジタル革命の進展によって、この技術革新のスピードはますます加速していくでしょう。

つまり現代では、複数の技術革新が同時多発的に起こり、それらが複雑に絡み合いながら経済や社会に大きな影響を与えています。そして、この技術革新の波は従来の経済サイクルの枠組みを超え、新たな景気循環のパターンを生み出しつつあります。特に半導体関連の技術革新は現代の景気循環を理解するうえで非常に重要な要素となっており、その影響力は今後ますます大きくなるでしょう。

●第3回は【エコノミスト注目! 市場参加者の心理が反映される3つの経済指標とは?】です。(3月30日に配信予定)

エコノミストの経済・投資の先を読む技法

 

著者名 熊野 英生

発行元    明日香出版社

価格 2,145円(税込)