三菱UFJ eスマート証券(旧auカブコム証券)の投信売れ筋(販売金額)ランキングの2025年2月のトップ2は前月と同様に「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」と「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」だった。第3位に前月第4位の「eMAXIS Slim 国内債券インデックス」が浮上し、第4位には前月第5位の「楽天日本株4.3倍ブル」がランクアップした。前月第3位だった「iFreeNEXT FANG+インデックス」がトップ5圏外に落ち、代わりに、「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」が第5位にランクインした。「積立設定金額」では、トップ3は同じで「iFreeNEXT FANG+インデックス」は第3位に残っている。前月第4位の「eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)」がトップ5から落ち、「スパークス・日本株・ロング・ショート・ファンド」が第5位にランクインした。

 

◆「FANG+」は積立投資で

「iFreeNEXT FANG+インデックス」は、「FAANMG」6社(Facebook(Meta Platforms)、Apple、Amazon、Netflix、Microsoft、Google(Alphabet))を含む、ビッグテック10銘柄で構成される株価指数「NYSE FANG+指数」に連動するインデックスファンドだ。2025年1月末時点で過去1年間のトータルリターンが52.4%、過去3年間では175.7%、5年間で447.8%と非常に大きなリターンをあげているが、少数銘柄に集中投資する関係で、価格変動率が大きくなりがちだ。もともと「販売金額」ランキングではトップ5から外れ、「積立設定金額」で上位にランクインするファンドだった。価格変動の大きさを均す(ならす)ために時間を分散してコツコツ投資しようという使われ方が主流だった。

そのファンドが2024年12月から「販売金額」でもトップ5に入るようになって、「販売金額」「積立設定金額」ともに「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」と「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」に次いで第3位にランクされるようになった。それが、2月には「積立設定金額」だけの第3位に戻った。そこには、トランプ政権になって始まった不安定な外交・経済政策によって米国の景気が腰折れするのではないかという懸念の高まりがあるのだろう。関税政策ひとつとっても、その規模や時期、また、除外条件などが、まるでトランプ大統領の思い付きででもあるかのように日によって変化しているように見える。グローバルなサプライチェーンを構築しているような大手企業にとってこのような腰の据わらない政策発表は迷惑でしかないだろう。多くの投資家にとっても先行きが不透明な間は投資を控えようという気分になる。

このような米国経済の先行きに対する漠然とした不安が、昨年末に人気が盛り上がりつつあった「iFreeNEXT FANG+インデックス」への投資勢いを弱めてしまったものと考えられる。

◆「国内債券インデックス」が選択される理由

「eMAXIS Slim 国内債券インデックス」が第3位に浮上した。だが、パフォーマンスで選ばれているわけではないだろう。2025年1月末を基準として過去1年間でトータルリターンはマイナス3.1%、過去3年でマイナス7.9%だ。超低金利政策(異次元金融緩和)をとってきた日本だが、デフレ脱却を確信した日銀が利上げするタイミングを狙っている最中だ。金利が上がることは債券価格にとってマイナスなので、このタイミングは積極的に国内債券に投資する局面ではない。

ただ、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」や「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」に投資している投資家がリスク分散のニーズで国内債券に投資するということはあり得る(この場合、債券を買うよりも預金の方が価格下落リスクは避けられるのだが)。国際分散投資を個々のインデックスファンドを組み合わせてポートフォリオにして実践しているとも考えられる。理由は定かではないが、「販売金額」でも「積立設定金額」でもランキングのトップ5に「国内債券インデックス」が入っているのは、三菱UFJ eスマート証券に特徴的な動きだ。