売り上げが厳しい

下校時刻になると、子どもたちがやってくる。子どもたちはカウンターに設置されている箱のなかに百円を入れたり、入れなかったりしたあとスタンプカードに判を押してもらい、弁当を受け取る。お金は払えるときに払えばいいことになっている。

経済的に苦しい家庭のため夕食を食べられなかったり、親が忙しいせいで孤独に食事をしなければならない子どもたちが、楽しく栄養のある食事ができるよう、すべて早苗が考えたことだった。

17時過ぎになり、帰っていく最後の子どもを見送ると、店長は早苗のことを呼んだ。子ども食堂を片付けていた手を止めて事務所に入ると、店長は苦々しい表情で唇を噛んでいた。

「吉田さん、本当に申し訳ないんだけど、これ以上、子ども食堂を続けるのは難しい。最近は弁当も売れないし、売り上げが厳しいと、どうにもね……」

店長は早苗に向けて深く頭を下げた。

「やめてください、店長」

覚悟はしていた。子ども食堂の運営資金の中心は、もちろんお店の売り上げだ。始めた当初は支援になるならと弁当を買いに来てくれる人も多かったが、最近ではそういう人もめっきりと減った。行政からの補助金などに頼りながらなんとか続けてきた子ども食堂だったが、限界ということだ。

「もちろん今すぐってわけじゃない。辞めるにしても、告知とかあるだろうし、ただ、今月いっぱいで子ども食堂を閉める準備をしてほしい」

「……」

分かりました、と言いたかったが、いくら覚悟をしていてもショックは大きく、早苗はただうなずくことしかできなかった。