<前編のあらすじ>

40年ほど会社員を続けてきた学さん(仮名・62歳)。妻の晶子さん(仮名・58歳)は扶養に入り、パート勤務をしていました。

学さんは60歳以降も会社で働きながら、本来65歳から支給される老齢基礎年金・老齢厚生年金を60歳になってすぐ繰上げ受給し、5年の繰上げで24%減額された年金を受け取っていました。しかし、その2年後に心筋梗塞で他界。晶子さんは今後の生活に不安を募らせます。

まずは遺族年金が減額されてしまうかどうかを確認するため、年金事務所で相談をしてみることに。昌子さんの疑問に対し、職員は「繰上げしたからといって遺族年金そのものは減りませんよ」と答えました。

●前編:【「遺族年金も減らされちゃうのかな」年金繰上げしていた夫が他界…取り残された妻が直面した老後不安】

亡くなった夫の報酬比例部分の4分の3とは?

会社員である学さんが亡くなったことにより、晶子さんには遺族厚生年金が支給されます。遺族厚生年金は亡くなった人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3で計算されるとされています。亡くなった人が繰上げして老齢厚生年金を減額受給していたとなると、その分遺族厚生年金も減らされてしまうと懸念するかもしれません。

職員はまず学さんの年金について説明します。「学さんの受給していた報酬比例部分は91万円ですね。学さんの場合、60歳の誕生月で5年繰上げをしたので24%(0.4%×60カ月)減の額でした。繰上げをする前の元々の額は120万円。120万円×76%が91万円ということですね」とのことでした。そして、「遺族厚生年金は減額後の4分の3ではなく、減額前の4分の3です」と続けます。

これを聞いて晶子さんは「繰上げ前の額の4分の3となると、遺族年金は120万円×3/4で90万円かな?」と考えます。しかし、職員は「いえ、遺族厚生年金の計算上、4分の3を掛ける前の報酬比例部分の額は120万円より多くなりますので、4分の3を掛けた額も90万円より多くなりますよ」と回答します。

どういうことかについて、職員は晶子さんに具体的な金額を示して説明します。「学さんは繰上げをした60歳以降も厚生年金に加入していました。遺族厚生年金の計算の基礎となる、減額される前の報酬比例部分は亡くなった頃までの厚生年金加入分も含まれます。60歳で繰り上げてから亡くなるまで2年間厚生年金加入期間があり、学さんの場合、その2年分の報酬比例部分として5万円増えることになる計算でした。つまり、120万円が125万円になっています。その結果、125万円を基礎に遺族厚生年金を計算することになり、その4分の3として年間94万円になります」とのことです。