<前編のあらすじ>
秀治さん(仮名、以下同)は74歳の会社経営者で、45年間連れ添った69歳の妻正子さんと暮らしていました。
秀治さんは既に老齢基礎年金や老齢厚生年金を受給しつつ、会社経営を続けていましたが、引退後の生活を考えるようになり、自分が先に亡くなった場合の正子さんの遺族年金を心配していました。しかし、遺族年金の受給には保険料の納付や免除の期間など受給資格期間が25年必要で、秀治さん自身はその合計が23年しかないことから、遺族年金は無理だと考えていました。
しかし、数カ月後に秀治さんが亡くなり、正子さんが年金事務所で確認したところ、遺族年金は支給されると案内され、予想外の展開になりました。
●前編:【「若い時にちゃんと国民年金保険料を払うべきだった…」遺族年金を諦めていた夫婦に訪れた「予想外の展開」】
25年未満でも中高齢者の特例制度がある
正子さんは年金事務所で遺族年金が支給されるとの案内を受けました。秀治さんは厚生年金に加入していたため、正子さんに支給される遺族年金は遺族厚生年金とのことでした。
遺族厚生年金を受給するための要件について、厚生年金加入中の死亡などでない場合で、老齢厚生年金を受給している人が亡くなった場合は、亡くなった人の受給資格期間が25年以上必要になっています。
秀治さんは国民年金保険料の納付4年、厚生年金被保険者期間19年が受給資格期間に算入されますが、合計しても23年しかなく、他に受給資格期間に算入できる期間はなさそうでした。そのため、合計25年未満であることは確かです。
しかし、秀治さんは中高齢者の特例制度に該当していました。その中高齢者の特例とは、生年月日により、男性は40歳以降で、女性は35歳以降で15~19年の第1号厚生年金被保険者(※会社・民間の法人等の役員・従業員を対象)の期間があれば、受給資格期間が25年未満でも25年の要件を満たす扱いとなります。
秀治さんは50歳になって法人化してその代表者となり、厚生年金に加入していました。全て40歳以降の厚生年金被保険者期間となり、これが70歳になるまで19年ちょっとありました。
そして、1950年5月生まれ(1950年4月2日~1951年4月1日生まれ)である秀治さんの場合は、当該期間が19年(228月)あればこの要件を満たすことになり、その結果、正子さんに遺族厚生年金が支給されることになります。窓口では「遺族厚生年金の額は40万円になります」との案内でした。