この2か月の間、実働40日における日経平均株価の動きの平均をとってみました。平均は0.05%です。つまり、チャラ。これはよいのですが、日々の騰落率のばらつきを示す標準偏差を取ってみると、3.12%と3%を超えていることがわかります。

結論から言えば、これほどばらつきのあるマーケットでは資産運用立国などできようはずがありません。揺れがずっと続いており、マーケットが沈静化しない。大きな問題です。

標準偏差3%の期間が2か月にわたって続くことがいかに異常か、次のグラフを見ていただければよくわかると思います。

 

年間246日ある営業日の騰落率の平均値と、標準偏差を1990年から2023年までまとめたものです。

左軸が日経平均の平均上昇率に当たります。マイナス0.2~プラス0.25%、だいたいゼロ近傍のところで収まっていますね。

対して、右軸が標準偏差です。こちらも、だいたいマイナス1~プラス1%大きく動いてもプラマイ2%で収まっています。

一か所だけ大きく膨らんでいる箇所があります。2008年です。年間平均騰落率はマイナス0.2%ですが、値動きは大きく、標準偏差は2.9%になった。これが、リーマンショックのときの動きです。

つまり、この2か月間、我々はずっとリーマンショック級の金融危機のさなかにいたようなものなのです。資産運用立国などできるわけがないですよね。

当然に政府・日銀は火消しに回っている。「豹変した」ともいわれますが、やり続けなければならない。マーケットが一度静まるまで絶対に利上げしてはいけないし、金融政策について口をはさんではいけないし、資産価格の安定化、揺れが止まるまでは、どうぞおとなしくしてください、そう関係者の皆さんは感じていると私は思います。

このあと解散総選挙があり、日々の動きが沈静化してくれた方が投資はしやすくなるでしょう。そうなれば、11月ごろからもう一度資産運用立国を目指す安定軌道に戻るのではないか。そう期待しています。

そのためには、一つの軸について考えねばなりません。それはデフレからの脱却です。アベノミクスの一つの功績として我々が認識しなければならない点があります。

アベノミクスなんとかデフレを耐え、そしてデフレを脱却できた。私はそう思っています。22年、23年、そして24年になりようやく人々もデフレからの脱却に確信を持ち始めてきた。賃金も上がり始めた。

しかし、石破政権の誕生により、デフレに戻るような政策が行われるかもしれない。そんなリスクを感じてマーケットは混乱しているように私は思うのです。

ただ、一つだけ言えることは、いろいろと波乱があっても、日経平均は3万円を割れなかった。年初の数字は3万3000円でしたが、そこから上がり、現在の日経平均は3万8000円台です。

少なくとも前には進んでおり、資産価格は増えている形です。不安にならずに、今一度冷静にマーケットを見守ってもらいたいなと思います。

 

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公式チャンネルと10月5日 放送分はこちらから

岡崎良介氏 金融ストラテジスト

1983年慶応義塾大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て87年野村投信(現・野村アセットマネジメント)入社、ファンドマネジャーとなる。93年バンカーストラスト信託銀行(現・ドイチェ・アセット・マネジメント)入社、運用担当常務として年金・投信・ヘッジファンドなどの運用に長く携わる。2004年フィスコ・アセットマネジメント(現・PayPayアセットマネジメント)の設立に運用担当最高責任者(CIO)として参画。2012年、独立。2013年IFA法人GAIAの投資政策委員会メンバー就任、2021年ピクテ投信投資顧問(現・ピクテ・ジャパン)客員フェロー就任。