インフレ抑制のために金融政策でできることは賃金の上昇率を下げる、早い話が「景気を悪くする」ことなのです。

次のグラフからこの点について考えてみたいと思います。

 

緑の折れ線グラフが「賃金上昇率」で、黒の折れ線グラフが「失業率」になります。2010年、1995年、1980年あたりの動きが象徴的ですね。「失業率が上がると物価が下がる」そんな動きが見て取れます。つまり、物価を下げることの本質は景気を悪くさせることだというわけです。

前編:【米国で再度スタグフレーションは起こるのか? カギを握る指標「個人消費支出」と「賃金上昇率」を解説】

しかし、82年以前に例外的な時代がありました。失業率と賃金がともになって上がっている箇所があります。これこそがスタグフレーションの時代なのです。

ここまでを踏まえ、直近はどうなっているかを見ていきたいと思います。まず、失業率は上がり始めています。ボトムは3.4%、直近では4.2%、高いときで4.3%まで上がっています。

賃金上昇率も、いっとき下がっていましたが、また上がり始めています。スタグフレーションの時代に戻ってしまうのではないか。そんな懸念を私は抱いています。

カギとなるのは、賃金上昇率と失業率がともに上がる理由があるかどうかです。