実は、過去、米国にスタグフレーションが到来した原因はいかに統計やデータを見ても判然としません。
ただ、一つ言えることがあります。逆説的ではありますが、スタグフレーションが起こった70年代の金融政策では引き締めが足りなかったのだと考えられます。
ここで念頭に置いていただきたいのが「期待インフレ」という言葉です。70年代当時、米国民、家計、労働者はインフレに対して期待を持っていました。
「給料はもっと上がるだろう。だから高い給料でないと働かない」
「物価ももっと上がるだろう。だから購入できるうちにモノを買う」
本来はこの期待を打ち壊すまで、金利を下げなければいけなかった。
実は、日本でも似た反省があります。「デフレ」です。本来はこのデフレへの期待をぶっ壊すまで、金融緩和をしなければいけなかったはずです。だから、私はまだ金利を上げてはだめだと考えています。
いずれにせよ、スタグフレーションの時代は反省ばかりです。二度と同じことが起こらぬよう、さまざまなデータが整備されました。その一つとして2000年代に誕生したのが、俗に「JOLTS統計」と呼ばれる求人統計です。
実は、もともと米国には求人統計はありませんでした。日本の有効求人倍率の方が先なのです。日本は有効求人倍率を使い、企業と労働者の需給を調べていましたが、米国にはそのような分析がなかった。
JOLTS統計が誕生した背景には、70年代当時に求人統計があれば、もっと早く利上げをし、利下げを遅らせることができたのではないか。そのような反省があったのではないかと思います。