さて、議論をもとに戻しましょう。米国では足元、物価を下げ渋るような動きが見られます。私は最も大きな要因は失業率が上がっているのに、全体的に求人率が減っていないことではないかと考えます。

そして、求人率が高止まりした状況が続くと、賃金の上昇率も高止まりしてしまう。そして物価、サービス価格も上がります。そうなればFRBが目標とする物価上昇率2%は達成できなくなる。そうなれば、FFレートもなかなか下げられなくなってしまうでしょう。

私の読み通り、物価が下がらない要因は労働者と企業のミスマッチにあるのであれば、アメリカの経済は成長できないかもしれない。さらに言えば、トランプ政権は移民に対して強硬な姿勢を取っていますが、移民の方たちが「宿泊・外食」「遊興・接客」などの仕事に携わっている状況で「移民排斥」のようなことが起これば、ミスマッチはさらに続くことになります。

さらに、ここで関税を上げ、諸物価が引き上げられてしまうと、FRBは簡単には利下げできなくなってしまうでしょう。ここまでお話ししてきたように、利下げができなくなるということ、意識的に景気を悪くすることにつながります。そうなれば当然、企業業績は悪くなります。

ナスダックは現在やたらと調子が良いですが、中小型株そしてNYダウは調子が悪い2週間でした。ここまで説明した流れをもしかしたら市場も読み始めているのではないかと感じています。

スタグフレーションについては、引き続き分析していきたいと思います。

 

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岡崎良介氏 金融ストラテジスト

1983年慶応義塾大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て87年野村投信(現・野村アセットマネジメント)入社、ファンドマネジャーとなる。93年バンカーストラスト信託銀行(現・ドイチェ・アセット・マネジメント)入社、運用担当常務として年金・投信・ヘッジファンドなどの運用に長く携わる。2004年フィスコ・アセットマネジメント(現・PayPayアセットマネジメント)の設立に運用担当最高責任者(CIO)として参画。2012年、独立。2013年IFA法人GAIAの投資政策委員会メンバー就任、2021年ピクテ投信投資顧問(現・ピクテ・ジャパン)客員フェロー就任。