一難去ってまた一難?「ゆとり」の接し方が子供の「油断」に
NISAの積み立ての話をきっかけに、子育ても含めた夫婦の会話をもったことで、麻美は悠人にイライラすることはせず、ゆったりと接するようになった。
ただ、悠人の成績は戻らなかった。受験に対する両親の思いが変化したことを敏感に感じて油断をしたのか、悠人の生活態度まで変わってきた。小野田は「なるようにしかならない」「いざとなれば公立中学に行けばいい」と放任の考えだったが、麻美は悠人が心配でならなかった。悠人の今の成績では、“中学受験全落ち”もありうる。「このまま悠人がグレてしまったらどうしよう」と考えると朝方まで眠ることもできないような日が続いて、ついには体調を崩して寝込んでしまった。
麻美が寝込んだことに一番びっくりしたのは悠人だった。母親が食事を準備し、家事全般を引き受けてくれていることが当たり前だと思っていた悠人は、突然、すべての家事がとどこおって、家の中が暗くジメジメしてきたことにいたたまれない思いがした。悠人は麻美が寝込んだ理由が自分にあることは十分に感じていたので、ベッドに横たわる麻美の枕元で生活態度を改めることを誓った。
麻美は悠人に「心配かけてごめんね」と笑顔を見せ、悠人を両親ともに大事に思い応援している気持ちを伝えた。悠人は、その言葉を聞いて自分が両親の期待や信頼を失ってしまったわけではないことを知った。そして、両親から期待を寄せられていることが悠人にとって喜びだということをかみしめたのだった。
最後は、家族で笑う日々に…
悠人はなんとか第三希望の私立中学に合格した。麻美の枕元で誓った通り、生活態度を改め、遅まきながら勉強をやり直した結果だった。
体調を戻した麻美と、小野田は再び話し合った。小野田は、悠人のための資産形成が一段落したため、今度は自分の口座で資産作りをはじめていた。「今いくら稼げるかも大事だが、資産も運用して増やすことで資産にも稼いでもらうことができる。1人で2人分の稼ぎ手を持っていると考えると、いろいろと可能性が広がるよ」と麻美に言った。
「麻美もカフェをやりたいと言っていたじゃない。何とかやりくりして今まで仕事を続けてきたけど、カフェのオーナーになるという夢はあきらめたの?」と真顔で聞いた。麻美は「いや、そんなことないけど…」と言い返した。
二人は最近にはなかったと思うほど、それからの人生の計画について話し続けた。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。