それでは、なぜ円高になったのでしょうか。日本が利上げしたからだとも言われますが、果たして本当にそれだけなのでしょうか。そこで、次に、10年金利の動きを考えながら、なぜ円高になったのかを調べてみました。

 

それがこちらのグラフです。先ほどのグラフと異なり、このグラフは左軸の日本の10年金利、右軸のアメリカの10年金利どちらも7月31日をスタートとしています。

31日では、日本の10年金利は1.07、たいしてアメリカは4.1です。そのご学区と下がり、だいたい横ばいで推移していき、3%弱の金利差は保たれています。

ここで、日米の金利差とドル円の動きをグラフにしたものを見ていきましょう。左軸がドル円で、右軸が日米の金利差です。だいたい連動するように動いています。

ただ、1カ所だけ頓珍漢な動きをしている箇所があります。8月5です。8月4日から5日にかけて、日米の金利差が拡大しているにもかかわらず、円高になった。

次に、日米の金利差を横軸に、ドル円の変化率を縦軸にして、ドル円の変化と日米の金利差の連動性を見ていきたいと思います。この1か月をまとめたのが次のグラフです。

 

8月5日は日本初のブラックマンデーとも言われました。なるほど異常事態だったのでしょう。飛びぬけてイレギュラーなことが起こっている。ただ、8月5日を除くと金利差が広がるとドルは強い、金利差が縮まるとドルは弱い。こういう関係性が見て取れます。

 

実際に、8月5日を除くとこんな絵になりました。なぜ、日本の株式市場が下がっているのかについて、分解してみていく作業を続けてきました。1番短くまとめて答えを出すとすれば、金利差が縮まり円高になり日本株が下がったということになろうと思います。

ここで、注目する点がいくつかあります。グラフの左端にY=13.872xという記載があります。これは、簡単に言えば、金利差が1%縮むと14%円高が進む。逆に金利差が1%広がると14%円安が進むことを意味しています。この傾向が延々と続くのであれば、今後の為替はどう動いていくのか。

電車でたとえるならば、脱線することもあり得ます。アメリカが仮に景気後退となった場合、アメリカの長期金利はどこまで下がるのか。状況によっては、1ドル120円ちょうどくらいまで動くような絵も見えてくる。

混乱混乱、大波乱の8月相場でしたが、色々調べてみると波乱の中でも一つの答えが見えてきます。その中でも注目は、アメリカの景気後退がどの程度のものになるのか、10年金利はどこへ行こうとしているのかということです。

景気が悪くなり、長期金利が下がっていけば、円高になっていく。円高は株安につながります。その結果、8月5日に日経平均3万1000円台という急落を見ました。

そんなアメリカ長期金利の動向を見守る上で重要なのが、中立金利の動向であり、それを決める、アメリカ大統領が誰になるのかということです。

最終的にアメリカの10年金利はどこへ行こうとしているのか、どこで折り返すのかが、今後の相場の動向を決めることになるでしょう。

 

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岡崎良介氏 金融ストラテジスト

1983年慶応義塾大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て87年野村投信(現・野村アセットマネジメント)入社、ファンドマネジャーとなる。93年バンカーストラスト信託銀行(現・ドイチェ・アセット・マネジメント)入社、運用担当常務として年金・投信・ヘッジファンドなどの運用に長く携わる。2004年フィスコ・アセットマネジメント(現・PayPayアセットマネジメント)の設立に運用担当最高責任者(CIO)として参画。2012年、独立。2013年IFA法人GAIAの投資政策委員会メンバー就任、2021年ピクテ投信投資顧問(現・ピクテ・ジャパン)客員フェロー就任。