<前編のあらすじ>

東北地方に住む下島麻鈴さん(仮名・50代)の父親は長年、不倫を続けていた。

小学4年生の夏、下島さんが父親と海水浴に行くと、そこには市役所に勤める父親の同僚女性とその子どもがいた。帰宅後、「どっかのオバちゃんと子どもと海に行った」と母親に報告すると、母親の表情は曇り、言ってはいけない言葉だったと後悔する。高校2年生の修学旅行では、父親から1万円をお土産代に渡されるが、それは不倫相手からのものだった。怒りで嵩張るお土産を買いこみ、下島さんは父親にぶちまけた。

下島さんは29歳で10歳年上の男性と結婚するも、7年後に離婚。その後、2歳上の男性と交際。その頃、長年、膝関節が湾曲する病気を患っていた父親は、医師から人工関節手術を勧められる。ところが、全身麻酔から覚めた父親はせん妄が激しく、介護が必要になった。そんななか、今度は父親に付き添っていた母親が稲荷寿司を喉に詰まらせ、倒れてしまう。

突然、下島さんは両親の介護をしなければならなくなった。

●前編:「女か、母さんか決めて!」不倫する父に娘が怒りを爆発させた修学旅行の“裏切り”

怒涛の介護生活

両親2人の介護が始まった下島さんは、まず父親を精神科に連れて行った。並行して地域包括センターに連絡をすると、職員が来てくれた。ケアマネジャーが決まり、介護認定を受ける方向で動き始める。

「膝のリハビリが不十分な状態で退院したため、入浴のときは特に困りました。慌てて楽天でお風呂用の椅子や浴槽に入れる台、バスボードなどを買った記憶があります。介護保険で購入すれば1割負担だったのですが、当時はそれを待てない状況でした」

父親はアルツハイマー型認知症と診断。要介護1と認定され、訪問介護、デイサービス、デイケア、ショートステイ、訪問歯科の利用を開始。

その他にも、障害者支援制度を使い、ヘルパーさんが散歩、カフェ、ドライブに連れて行ってくれる外出援助の利用も始めた。

一方母親は、一命はとりとめたものの、もともとあったうつ状態が悪化し、持病の腰痛や窒息時の転倒で身体状況が低下。要支援2と認定され、訪問介護やデイサービス、訪問看護、訪問者リハビリ、訪問歯科、訪問医療マッサージなどの利用をスタートした。