商品がサッパリ売れない……そんなときは?

では、商品開発に関しては、成果をどのように評価するのでしょうか。村井さんは、次のように明かしてくれました。「同じ金融商品でも、会社の命運をかけて開発する保険商品と比べて、投信の開発は気軽な面があるのも確かです。極端な話、大急ぎで作れば1か月ぐらいでできてしまいますから、失敗も許容されやすく、3本に1本ぐらい当たればいいという雰囲気すらあります」。

村井さん(仮名)

だからといって、せっかく世に出した商品が投資家に見向きもされないという状況が、運用会社にとって望ましくないのは言うまでもありません。自社商品の売れ行きが鈍い中で、他社でヒット商品が出ているようなときには、プレッシャーを感じると山本さんは言います。「売れるものを作らなければならないと精神的に追い込まれれば追い込まれるほど、アイデアも出にくくなる。こういう負のスパイラルに陥ってしまうと、脱出するのに苦労します」。

しかも、投信はどんなに魅力がある商品だったとしても、相場環境が悪ければ、鳴かず飛ばずということも少なくありません。外部環境次第というところを、もどかしく感じることもあるのではないでしょうか。

「そこは割り切りも必要ですね。誤解を恐れずに言えば、苦労して作っても、売れない商品のほうが圧倒的に多い。そもそも全ての商品が生き残るのは、不可能なのが投資信託の世界なんです」(山本さん)。

だからこそ、売れない商品を作ったからといって、すぐに評価が下がるわけではないそうです。「形のある製品と違って原価の概念がないので、1本の失敗で大きな赤字が出るわけではありませんから」と山本さん。とはいえ、会社全体の業績が計画に達することができないと、結果的にボーナスや給料が減ることはやはりあるとのことです。

ただし、山本さんにとっては「もっと魅力ある商品を作っていれば……」という「機会損失」の思いのほうが大きく、そんなところも作詞作曲と似ていると感じる理由なのだそう。運用会社のさまざまな業務の中でも、最もクリエイティブな仕事が商品開発なのかもしれません。