1月16日、ブラックロックが運用する「iシェアーズ S&P500 トップ20 ETF」(愛称:トップ・オブ・アメリカ)、「iシェアーズ ゴールド ETF」(愛称:金のETF)が東京証券取引所に上場した。当日、東証で開催された記念セレモニーでは、ETF市場の活性化に期待を込め、2銘柄の上場を祝う打鐘が行われた。
新規上場となるETF2銘柄、個人投資家にとっての魅力は?
「iシェアーズETF」は、世界最大の資産運用会社であるブラックロックが運用するETFブランド。世界のETF市場において、同ブランドは30.4%(2023年12月末時点)と世界最大のシェアを誇り、今回の2銘柄の上場で 「iシェアーズETF 東証上場シリーズ」は43銘柄になる。新規上場の狙いはどこにあったのか。
iシェアーズ S&P500 トップ20 ETF
iシェアーズ S&P500 トップ20 ETFは、米国の時価総額上位20銘柄を投資対象とする集中投資型のETF。東証上場ETFで初めて、S&P500 トップ20セレクト指数へ連動する商品となる。
S&P500が米国の大手企業500社の時価総額で算出されるのに対し、S&P500 トップ 20セレクト指数は、S&P500構成銘柄のうち時価総額の上位20社から算出される、集中投資型の指数だ。
ブラックロック・ジャパンのクライアント・ビジネス部門でETFビジネスを担当する渡邉啓輔氏は、同ETF上場の目的を「多様化するお客さまのニーズに応えられる商品を提供していきたい思いがあったからです」と説明。
「旧NISA以降、米国株インデックスとしてS&P500が定番化してきています。一方で、S&P500に含まれる時価総額上位の個別企業に投資する個人投資家も増えてきていると感じています。とはいえS&P500の上位銘柄をまとめて投資するとなると、管理も大変ですし、多額のコストもかかります。半面、われわれのETFであれば、分散も効き、管理の手間も省け、2000円程度から買えるようになります」と商品の魅力を強調した。
iシェアーズ ゴールド ETF
iシェアーズ ゴールド ETFは、ロンドンで決定される現物価格であるLBMA金価格(円換算ベース)へ連動し、東証上場の金価格連動ETFの中で最安値の商品となる。
金は“有事の金”とも呼ばれ、古くから最も信用力がある資産の1つとして支持を集めてきた。インフレに強く、株や債券など他の資産と相関性が低いことから、分散投資において重要な役割を果たす。この数年で金が過去最高値を突破していることもあり、資産保全の役割にとどまらず、リターンドライバーとしても投資家からの注目が高まっている。
渡邉氏は、「元々、当社では海外市場に上場している金のETFを金融庁に届出する形で日本のお客さまに提供していました。その中で、「『円建ての口座で手軽に取引したい』という方もいらっしゃいました。新NISAで個人投資家の方の資産形成意欲が高まっている今、なるべく早期に東証上場シリーズのラインアップに加えたいと考えていました」と上場の経緯を語った。
続けて、ETFを通じて金投資するメリットは「手軽さ」であるとした上で、「現物を持つ場合、保管場所の問題が必ず出てきます。純金積立も良いのですが、現物と純金積立に共通するのは、総合課税に分類されることです。一方、ETFであれば申告分離課税で株式投資と同じ扱いになり、損益通算なども使えます。これは分散投資を考える上では非常に重要です。さらに、NISAで投資できる利便性も、現物と比べ非常に大きなアドバンテージです」と述べた。
iシェアーズ ゴールド ETFならではのアドバンテージについて、「1つは東証最安値の信託報酬率。信託報酬率は、資産形成に中長期で取り組むとすれば非常に大きなポイントです。もう1つは現物の裏付けがあること。受益権分の金の裏付けがあることにより、投資家のみなさまの安心感につながると考えています」と語った。
ブラックロックのETFの強みはラインアップの豊富さ
iシェアーズ・ブランドの最大の魅力は「商品ラインアップの豊富さ」にあると渡邉氏は強調。「商品ラインアップの幅と深さ、両方がなければ、多様化する投資ニーズに応えることができないと考えています。われわれには東証上場シリーズのみならず、金融庁に届出を行っている海外上場ETFも多数ありますので、この商品ラインアップの豊富さで、お客さまのニーズに応える商品を提供できている点が強みです」と語った。
また、日本では個人の資産運用において投資信託での運用が主流となっている中、渡邉氏は「個人投資家の方の中には、株価の動きを追いながら、機動的に自身のタイミングで投資したい方も一定数いらっしゃいます。投資信託に物足りなさを感じている方も少なくないでしょうから、ETFの利便性を訴えていきたい」と強調した。
同時に、今後ETFがよりメジャーな選択肢になっていくための課題は「運用会社として、情報提供などを通じ、お客さまにもっとETFを知っていただく機会を増やしていくことです」と説明。「欧米のように、アドバイザーが個人の資産形成を支援する“フィービジネス”の中でETFの活用が進むかどうかも重要です」と語った。
今回新規上場したETF2銘柄は、いずれもNISA成長投資枠の対象銘柄だ。これまで投資信託のみの運用を行っており、今後ETFでの運用にもチャレンジしてみたいという方は、ぜひ検討の選択肢に加えてみてはいかがだろうか。