コーヒーブレイク お金を使うならば「生き金」、「死に金」はあかん!

1985年に阪神タイガースが日本一となったとき、「ハレー彗星」(75年周期)といわれた阪神優勝を「生きているうちにみることができた」と感動しました。2023年は「2度目の日本一」と、私にとっては特別な年となりました。

そんな私が小学生の頃、友達から「この電話番号にかけたら、阪神の結果が聞けるで」と教えてもらい、自宅の電話で試してみました。母に「今日は勝ったで」と報告すると「何で知ってんの?」と聞かれて事情を説明すると、「そんな電話をかけてどうすんの。10円要るねん。もう、やめとき」と強い口調でいわれました。

ところが、そんな母の口癖は「本と文房具はお母さんが出したる。小遣いとは別や」でした。あるとき「10円で怒るのに、なんで本と文房具は別なんや?」と聞いたところ、「あんたなぁ、お金はなんぼあっても泥棒に入られたら終わりや。家なんか火事なったら終わりや。せやけど、あんたの頭に入ったことは一生盗られへん。そのお金の使い方は『生き金』や。明日になれば新聞で分かることを電話で聞くようなんは『死に金』や」ということでした。

お金を「借りる」には「資産を形成するための借入」と「身の丈以上の消費のための借入」という説明をしましたが、母にいわせると「死に金」か、ヒトやモノの資産形成につながるような「生き金」か、その使い方を考えて借金するかどうかを考えなさい、ということなのだろうと、この原稿をつくりながら「10円で叱られた小学生の頃」の苦い記憶が蘇りました。
 

ファイナンシャル・ライフ・エンジニアリング―したたかに“楽しむ”!洗練された「人生の経営者」を目指して

井戸照喜 著
発行所:金融財政事情研究会
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