<前編のあらすじ>

結婚9年目の志保さんは、ある日突然夫の雅人さんに離婚を切り出された。雅人さんの趣味はギャンブルで、それを良く思わない志保さんからことあるごとに責められることに不満を感じていたのだった。

当初志保さんは離婚に反対したが、2人は10カ月の別居を経て正式に離婚することになった。離婚時の取り決めは養育費は毎月5万円。そして財産分与として雅人さんから志保さんへ300万円を支払うというものだった。

しかし、雅人さんからは離婚時に財産分与の300万円が支払われたきりで、離婚から1年たっても養育費の支払いは不安定だという。そこで志保さんから「養育費が支払われないので契約書の内容で強制的に払わせることができないか」と相談があった。

●前編:【結婚9年目の子持ち夫婦が離婚…養育費を払わない元夫が言い放った「無責任すぎる一言」】

雅人さんへの差し押さえがかなわない理由

残念ながら離婚協議書はそれ自体に強制力はない。離婚協議書のような法的書面を作成すれば、相手が任意に支払わなくとも強制的に支払わせられると考えられがちだが、実際はそうではないのだ。

離婚協議書があったとしても、強制的に相手方に支払わせるには裁判を経て差し押さえの手続きをする必要がある。そのため、専門家や少々法律に詳しい人の中では「実質的に離婚協議書は作っても意味がない」という意見も出るほどだ。

実のところ書面作成時、私は志保さんに対してそのことを告げていた。「離婚協議書は作成してもそれ単体では差し押さえなど、いわゆる強制的に取り立てることはできません。支払いが滞ることを考えると即時に差し押さえが可能な公正証書としておくべきです」と。

それに対して志保さんからは「協議書の形で書面が残っていれば普通は支払うと思うので大丈夫です」と言われていた。私は依頼通り一般的な離婚協議書を作成したが、やはり懸念した通りの結果となったわけだ。