アクティブETFの特徴

アクティブETFは、ETFとしての側面とアクティブ・ファンドとしての側面の双方を 持ち合わせており、以下のような特徴がある。

税効率

米国では、ETFはミューチュアル・ファンドよりも税制上のメリットがある。ミューチュアル・ファンドの場合、ファンドの設定および解約は金銭(キャッシュ)で行われるため、これに対応するためファンド内の保有銘柄の売買を行う必要がある。この際、ファンドで保有している銘柄を売却し売却益(キャピタルゲイン)が生じた場合、その利益はファンドのキャピタルゲイン課税の対象となる。一般的には、ファンド側でこの課税を避けるために、ファンドは投資家に対して分配金として収益を分配し、投資家はこの分配金に対して課税されることになる。つまり、他人の解約により望まない形で分配金が支払われ、課税されるということである。ETFの場合、設定および解約は株式等の現物を用いて行うことができるため、ミューチュアル・ファンドで生じるような売却益を実現することが回避できるため、他人の解約による分配金の支払いが発生することは無い。もちろん、投資家がETFを売却した際に売却益が発生する場合は、キャピタルゲイン課税の対象となるが、売却タイミングについては投資家が決定権を持つため、税金の発生タイミングは投資家がコントロールできる。なお、メリットの大きさはファンドの運用対象の資産クラスや運用戦略により異なり、通常は債券型ETFよりも株式型ETFのほうが税制上のメリットは大きくなる。近年の米国における株式型のアクティブETFの成長の主な理由は、この税効率の良さである。

欧州では上述の米国のようなメリットは存在せず、国により税制は異なり、場合に よってはETFのほうが不利になることもある。例えば、スペインでは、ETFの投資家は、ミューチュアル・ファンドにおけるファンド乗り換え時にキャピタルゲインを 繰り延べることができる「トラスパソス(Traspasos)」、という税制優遇措置の恩恵を受けることができない。

日本のアクティブETFは、現時点では設定および解約は金銭に限定されているものの、日本ではETFも一般の投資信託も、共にファンド内で発生した売却益等は非課税となるので米国のような税効率の良さのメリットは存在しない。また、投資家に課せられる税金もETFおよび一般の投資信託で基本的には区別はないため、税金面で有利になるという理由でアクティブETFが発展していくことは現時点では考えら れない。

低コスト

米国では、アクティブETFには通常、同一運用戦略を持つファンドの最も安いシェアクラスと同じもしくはそれより安い運用費用が設定されている。ETFについてはファンド購入時の販売手数料や運用中に販売会社に支払われる12b-1手数料がなく、費用は低く抑えられる。アクティブETFの総経費率の平均は0.65%であり、アクティブのミューチュアル・ファンドの総経費率の平均より3割以上も低い水準である。欧州も同様にアクティブETFの運用費用は低く、運用期間中の費用の純資産総額加重平均は2024年3月末時点で0.28%である。

日本でもアクティブETFの総経費率は、アクティブ運用を行う通常の投資信託より も低くなる。通常の投資信託の場合、信託報酬の半分近くが販売会社の取り分であ る代行手数料となるケースが多いが、ETFの場合は代行手数料は含まれない。また、運用報告書の作成義務もないため、作成費用の分だけETFの費用を低く抑えることも可能である。上場のための費用などETF独自の費用は発生するものの、一般的には通常の投資信託に比べると総経費率は低くなる。

運用期間中の費用についてはETFは有利になるが、売買時のコストについては留意 が必要である。ETFの売買手数料は株式の売買に準じることが一般的であり、一部オンライン証券では手数料無料化となり、売買手数料が発生しないケースがある。しかし、取引の際にはビッド・アスク・スプレッド(最良の買い気配値と売り気配値 の差)が存在し、特に流動性の低い(出来高の小さい)ETFについては、ビッド・アスク・スプレッドが広いので、個人投資家はETF本来の価格(基準価額)に比べて不利な価格で売買する可能性がある。その結果、本来得られるべきリターンを食いつぶす可能性があるので、取引の際にはビッド・アスク・スプレッドや出来高、売買代金をよく確認したほうが良い。

透明性

米国、欧州、日本ともに保有銘柄開示は基本的には日次で開示される。従って、ETFの投資家は常にETFがどの銘柄をどの程度保有しているかを把握することができ、投資を検討する際に有用な情報となる。また保有銘柄開示は、指定参加者や他のマーケット・メーカーによるETFの価格付けを正確なものとし、その結果、ビッド・アスク・スプレッドが縮小し、またETFの流動性の向上にもつながる。なお、米国では保有銘柄開示を投資家向けには日次で行う必要がないという、非透明型のETFも認められている。これについては後述するが、投資家がアクティブETFには透明性を期待していることから、現時点では投資家の支持を大きく集めてはいない。 

なお、この透明性が裏目にでる可能性もある。アクティブ運用において保有銘柄情 報を高い頻度で開示するということは、運用における「秘伝のタレ」のレシピを公 開するようなものであり、またフロントランニングを誘発するリスクもある。これ により、アクティブ運用者の優位性がなくなり、結果として投資家が本来得られる べきアクティブ・リターンを享受できない可能性もある。

取引の自由度

ミューチュアル・ファンドおよび一般の投資信託は、1日に1回(終値ベース)の タイミングでしか取引はできないが、ETFは市場が開いている間は売買できる。また ETF は、個別株式のように買い持ちするだけでなく、信用取引、オプション取引、貸し株などもできる。これにより多くの投資家が関わることでETFの流動性を高めて いる。

運用キャパシティ

米国や欧州のETFの場合、資金が集まりファンドが大きくなり運用が困難になったからと言って新規申し込みを停止することはできない。この運用キャパシティの問題は、集中投資戦略や流動性の低い市場に投資しているファンドの場合により大きくなり、ファンドの規模が大きくなることで、ETF 内での取引時のマーケットインパクトが大きくなる可能性が高まる。従ってETF投資家は、小さな土俵で勝負する集中型アクティブ・ファンドの規模に留意する必要がある。日本では、ETF でも信託金額の上限を設けたり、運用会社が新規申し込みの一時停止などできるため、運用キャパシティの問題は米国や欧州に比べるとあまり無いであろうが、運用会社が新規申し込みの一時停止などを行うと、ETF の基準価額と市場価格の差(プレミアム・ディスカウント)が大きくなる可能性があることには留意が必要である。