米欧のアクティブETFのトップランナーとその特徴

米国では2024年3月末時点で、約1,300本のアクティブETFが存在している。このう ち、上位10ファンドの純資産総額の合計は1,500億ドルに達しており、米国アクテ ィブETFの約4分の1を占めている。上位30ファンドまで広げると、純資産総額の 合計は約2,800億ドルとなり、米国アクティブETFの半分近くのシェアを占める。こ れは、一握りのアクティブETFが投資家からの支持を得る一方で、その他大部分のアクティブETFは成功を収めていないことを示す。運用会社レベルも同様で、数百 社がアクティブETFに参入する中で、上位10社でアクティブETF全体の純資産総額 の75%のシェアを占めている。上位ファンドを見ると、株式型についてはDFAの存 在感が大きい。上位を占めている同社の運用戦略は、ファンド・マネジャーによる 銘柄選定やマクロ経済の見通し等によるアクティブ運用ではなく、学術研究等の理 論を背景としたファクター投資の要素が大きい。株式型についてはJ.P. MorganのETFも2ファンドがランクインしている。これらは株式を保有しつつオプションを売却する運用戦略(カバードコール戦略)であり、これによりインカムゲインを獲得し収益分配を目指すものである。債券型についてはJ.P. MorganとPIMCOのETFが上位10ファンドに入っている。双方ともデュレーションを短くした運用戦略であり、最近の逆イールド(満期の近い債券のほうが満期の長い債券よりも利回りが高い)の状況が、短期債券のアクティブETFを後押ししていると考えられる。

 

欧州では米国よりアクティブETFの選択肢は少なく、2024年3月末時点で約90本ほどしかない。このうち上位5ファンドだけで欧州アクティブETFの約半分のシェアを占めている。アクティブETFに参入している運用会社も約20社であり、そのうちJ.P. Morganがトップであり、同社だけで欧州アクティブETFの約半分のシェアを占めている。上位ファンドの傾向としては債券型に関しては米国同様に短期債券の運用戦略がランクインしている。株式型に関してはJ.P. Morganのリサーチ・エンハンストのETFが上位を占めている。これらのETFは同社のアナリストによる個別銘柄の将来見通しを反映したレーティングに基づきポートフォリオが構築されるものであるが、一般的なアクティブ運用戦略とは異なり、より多くの銘柄に分散投資を行いシステマチックにポートフォリオを構築するものである。

 

なお、株式型については、米国および欧州ともにアクティブ・リスクを大きく取らないETFに資金が集まっている。アクティブ・リスクをどの程度とっているかを見る尺度として、アクティブ・シェアがある。アクティブ・シェアは、ベンチマーク指数と銘柄および保有比率を完全に合わせるようなインデックス・ファンドの場合は0%となり、ファンドの保有銘柄がベンチマーク指数と全く異なる場合は100%となる。米国において、米国株式でアクティブ運用を行うETFと一般のミューチュアル・ファンドのアクティブ・シェアを比較すると、ともに単純平均のアクティブ・シェアは70-75%程度であり、アクティブETFのラインアップとしてアクティブ・リスクが低いとは言えない。しかし、純資産総額で加重平均したアクティブ・シェアを見ると、一般のミューチュアル・ファンドが60%強である一方、アクティブETFは 約50%である。「ARK Innovation ETF」のように高いアクティブ・リスクをとるファンドも存在するが、投資家から大きな支持を集めているのは、運用キャパシティの懸念が低く幅広く分散された、アクティブ・リスクの低いETFであると言えよう。欧州でも同様の傾向はみられ、アクティブ・リスクの大きさは一般のミューチュアル・ファンドと比較すると控え目なものが多くなっている。