商品に偏りがあれば加入者も声を挙げるべき

では、他の運営管理機関と比較して、自社に提供されている商品のグループ比率が高かったり、信託報酬が高かったりした場合には、どうすればよいのでしょう? 日本よりも先にDC制度をスタートさせた米国では、あまりに加入者にとって不利な対応(具体的には高い手数料の商品や運用成績が芳しくない商品を提供していた場合など)を行っていた事業主に対して、加入者が集団訴訟を起こすケースもあるようです。

しかし、ここは日本。そのような事例はこれまでありません(また、DC関係の法的な枠組みも異なります)。日本の加入者・従業員の方ができることは、情報・知識を収集し、会社の中で声を挙げることではないでしょうか。

インターネットでご自身のアカウントにアクセスし(口座番号やパスワードを忘れてしまったという人はコールセンターなどに連絡することで確認できます)、どんな運用商品があるのか、手数料や成績が他の類似の運用商品と比較してよいのかどうかなどを確認しましょう。そして不利な運用商品に投資しないよう、注意すべきです。

幸いにして、近年、運用商品の情報開示が進んでいて、運用商品の一覧(商品とパフォーマンス、コストなども含む)が公表されるようになったのもその一環です。結果として運用商品の比較はより容易となり、運営管理機関ごとの競争を促進することも期待されます。裏を返せば、パッシブ商品にもかかわらず、前述のように各社で信託報酬(手数料)の差があったのは、これまで競争がそれほどなかったことによるものなのかもしれません。

企業型DCの運用商品に健全な競争があれば、信託報酬の低下やより魅力的な商品が選択できるようになるといったメリットが加入者にもたらされると考えられます。そのためには、最終的な受益者である加入者、従業員の方が運用商品の動向に敏感である必要があると思います。

というのも、運営管理機関と契約しているのはあくまで企業で、企業は必ずしも運用商品のパフォーマンスやコストに関心を持っているわけではないからです(運用商品のパフォーマンスが良くなっても、企業が直接、利益を得られるわけではありません)。そして、もし不合理な運用商品しかラインアップされていないのであれば、何かしら声を挙げる必要もあるでしょう。